そごう・西武売却を巡る騒動は、いまや直接の利害関係者だけの問題にとどまらなくなっている。今年に入り競合百貨店13社の労働組合幹部がセブン&アイ・ホールディングスに要請書を提出、そごう・西武労働組合への全面支援を表明した。池袋にゆかりのある他業態の労組も、「取引先への誠実な対応」などを求める署名活動を行った。特集『セブン解体 池袋動乱編』(全6回)の最終回では、そごう・西武労組の寺岡泰博中央執行委員長が、こうした動きの背景や労使交渉の問題点、そしてセブン&アイへの要求内容について明かした。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
社外取にも意見書を送付
そごう・西武売却巡る労組“捨て身”の訴え
――セブン&アイ・ホールディングスは昨年11月11日、そごう・西武株式を米ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに譲渡すると発表しました。しかし旗艦店である西武池袋本店の“リニューアル計画”を巡る利害関係者の調整に難航し、1月24日に契約実行日を延期した。そごう・西武労働組合として、このディールをどう見ていますか。
そごう・西武株式売却について昨年1月末に報道が出て以来、われわれはセブン&アイの経営陣に対し、百貨店事業の継続と雇用の維持について事前協議を行いたいと再三にわたって求めてきました。
しかし、長く「決定事項はない」の一点張りで、井阪(隆一セブン&アイ)社長と直接お話しできたのは、最初の報道から8カ月がたった10月になってからです。
協議の場自体をなかなか設けてもらえなかったので、要望書等の書面もしたため、協議の必要性を訴えていました。直前には、セブン&アイの社外取締役や監査役にも対象を広げて意見書を出している。
しかし面会がかなった昨年10月以降、現時点に至るまで、説明を受けてはっきりと把握できたことといえば、セブン&アイがフォートレスと譲渡契約を結び、そのフォートレスがヨドバシホールディングスをビジネスパートナーにするということ以外にありません。
雇用や労働条件に関わることは、労働協約上「協議事項」となっています。「何も決まっていない」「決まっていたとしても、秘密保持契約を結んでおり話すことができない」「譲渡契約はそごう・西武の再成長のために結ぶのだから、安心してくれ」――。セブン&アイはそう繰り返しますが、これでは「何も協議できていない」に等しい。日にちだけが過ぎ去っている印象です。
このままでは百貨店事業の継続と雇用の維持が担保できるという具体的な根拠を得られず、組合員への説明責任を果たせません。
――労組はそごう・西武の売却に「反対」だということなのでしょうか。
株式譲渡はセブン&アイの専権事項だと理解していますし、何もかも反対するつもりはありません。
「何もかも反対するつもりはない」――。そごう・西武労組の寺岡泰博中央執行委員長は意外にも、そごう・西武の売却自体には割り切りを見せ、そう断言する。では、労組はセブン&アイの交渉のどこを問題視し、何を求めているのか。競合百貨店13社の労組も賛同したそごう・西武労組の“主張”について徹底的に掘り下げた。