セブン解体#1Photo by Mieko Arai

米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループが優先交渉権を得ているセブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武の売却交渉が、「八方ふさがり」の様相を呈している。混乱の源は、フォートレスが連携相手に選んだヨドバシホールディングスが出す「無理筋の条件」だ。それにそごう・西武の労働組合が猛反発、地権者の同意を得るのも至難の業とみられており、交渉不成立の観測が飛び交っている。特集『セブン解体』(全6回)の#1で、その真相を探った。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、新井美江子)

そごう・西武の労組が売却に反対表明
さらなる交渉の長期化は必至か

「百貨店としてのブランド毀損、社員リストラありきの進め方は到底受け入れられない」「事業継続と雇用維持は徹底的にこだわる」――。

 今月初旬、こんな強い物言いの声明文が、セブン&アイ・ホールディングスの取締役や監査役らに届いた。差出人は、目下、セブン&アイが売却交渉を進める百貨店子会社、そごう・西武の労働組合だ。

 そごう・西武の売却を巡っては今年8月、セブン&アイの取締役会が米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに優先交渉権の付与を決議。だが2カ月が過ぎた今も、ディール成立の気配は一向にない。

 セブン&アイの井阪隆一社長は10月6日の決算説明会で、そごう・西武の事業継続と再成長へ向けて「ベストオーナーを探す」と改めて述べたが、当初の交渉期限は既に複数回延期されている。交渉は難航し、セブン&アイが目指す年内の株式譲渡契約の締結も「到底不可能だ」との声が内部から漏れ聞こえ始めた。

 いったい水面下の売却交渉で何が起きているのか。労組の事実上の売却反対表明が意味することは何か。

 取材で浮かび上がってきたのは、あまりにもお粗末なセブン&アイの売却計画だ。