「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と断言し、その悩みに明確な答えを与えてくれる「アドラー心理学」。日本では無名に近かったこの心理学を分かりやすく解説し、世界累計1000万部超のベストセラーとなっているのが『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』の“勇気シリーズ”です。
この連載では、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者である岸見一郎氏と古賀史健氏が、アドラー心理学の教えに基づいて、皆さんから寄せられたさまざまな悩みにお答えします。
今回は、自らの妊活がどうなるか不安を感じている方からのご相談。岸見氏と古賀氏がアドラー心理学流に、「未来への不安」にどう対処すればよいかズバリ回答します。(構成/水沢環)
今回のご相談
妊活をしていますが、希望の結果が得られなかったときに後悔しないか、パートナーに後ろめたくならないか不安になります。この気持をどう受け止めたらいいでしょうか?(妊活中の方)
「アドラー心理学流」回答
古賀史健 まずはじめにお伝えしたいのは「未来は存在しない」ということ。「もしこうなったらどうしよう」と悩む気持ちはすごく分かりますが、今それを悩んでも、なにかが解決するわけではありません。その場面になったときしか解決策は出てこないんですね。もちろんこれは妊活だけではなくて、たとえば「もし病気になったらどうしよう」とかも同じです。病気になってからじゃないと自分の本当の気持ちは分かりませんよね。
今まだ存在しない未来を考えて、モヤモヤして、夫婦関係が悪くなってしまう。それこそ一番あってはいけないことです。二人で一つのことを目指しているのであれば、まずは仲良く協力してそこに向かうのが大事だと思います。とても難しいとは思いますが、今の段階ではあまり考えすぎず、目の前のことに集中されるのがいいのではないでしょうか。
岸見一郎 子どもさえいれば夫婦が仲良くなれるというわけでもないでしょう。実際に子どもを授かってみないと、夫婦仲がどうなるかは分かりません。
我々はなにか目標を立てると、それを達成するまでの人生を「仮の人生」だと思いがちです。でも仮の人生はないのです。今、こうして生きている瞬間が、そのまま本当の人生だと考えたい。
目標を達成できるかどうかはもちろん大事ですが、そこに至る過程そのものがとても大切なのです。だから『嫌われる勇気』では「今ここに生きる」ということをかなり重要なポイントとして打ち出しました。質問者さんも、子どものいない今の人生を仮のものだと思わず、「今が本番なんだ」と思ってご夫婦仲良く過ごしていただきたいです。
(次回もお楽しみに)