サントリーの「大人の事情」、カフェイン中毒は増加中
つまり、「ボスカフェイン」といリスクの高い商品が世に送り出された背景には、「多少世間から叩かれることがあっても、缶コーヒーの巻き返しをしたい」というサントリー側の「大人の事情」があった可能性があるのだ。
ただ、もしもそのような覚悟があってのことだとしても、サントリーは想定していなかったよう大きなリスクに直面するかもしれない。ボスカフェインを飲んだ未成年者の健康被害が指摘される恐れがあるからだ。
ご存じのように、エナジードリンクが「成長期の子ども」に悪影響を及ぼすということはかねて指摘されている。
例えば、『エナジードリンクを飲む子どもたちに起きている「異変」』(Yahoo!ニュース17年11月21日)の記事だ。日本体育大学・野井真吾研究室とYahoo!ニュースが共同で、全国の小中高など1096人の養護教諭にアンケートを実施したところ、「エナジードリンクを習慣的に飲んでいる子どもがいる」と回答したのは中学で24.4%、高校では48.4%だった。受験勉強や夜更かしなどで、多くの子どもがエナジードリンクを飲んでおり、中には体調不良や心身の異常を訴えるケースが増えているというのだ。
実際、エナジードリンクの市場拡大に歩みをそろえるように、カフェイン中毒による救急搬送も増えている。
埼玉医科大学病院の救急センター・中毒センター(当時)の上條吉人センター長らが行った日本中毒学会の調査結果によれば、11年から15年に救急医療機関38施設にカフェイン中毒で救急搬送された患者は101人いて、そのうち7人が心停止を起こし、3人が死亡していた。9割以上が錠剤による中毒だが、中にはエナジードリンクを一緒に飲んでいる人もいたという。
「エナジードリンクのような缶コーヒー」を自認するボスカフェインはこのような社会問題に、自ら首を突っ込んで「参戦」したようなものだ。何か悲劇が起きた際に、サントリーが想定しなかったような批判の嵐にさらされる恐れもあるのだ。