世界の潮流に逆行してもコーヒーを飲んでもらいたい切実な事情

 それを物語るのが、ボスカフェインの開発コンセプトだ。

<今回、仕事や勉強、スポーツや運転などのシーンにおいて、エナジードリンクと同様に缶コーヒーを“使う”若い世代に着目しました>(ニュースリリース3月2日)

 つまり、今回の商品は若者や子どもという若い世代をターゲットにしており、「エナジードリンクのように眠気を感じた時にグビグビやれるコーヒー」という位置付けなのだ。

 この方向性が定まった時点で、サントリー側は炎上を覚悟したはずだ。先ほど申し上げたように、WHOや欧米豪政府は「若者や子どものカフェイン中毒死」を防ごうと注意喚起をしており、エナジードリンクを未成年者に販売することを禁止をするような国もある。

 そんな世界の潮流に完全に背を向けて「エナジードリンクみたいなコーヒつくって若い世代にじゃんじゃん飲んでもらおう」という路線で勝負をするのだから、ちょっと考えれば、ボロカスに叩かれる展開は予想できる。

 では、サントリーはなぜあえてそんなリスキーな戦い方を選んだのか。これはあくまで筆者の勝手な推測だが、「背に腹は代えられなかったから」ではないか。

 実は今、缶コーヒー市場はすさまじい勢いで縮小している。人口減少やコンビニコーヒーの台頭でじわじわと減っていたのだが、コロナ禍がさらに追い討ちをかけた構図だ。

「調査会社の富士経済によると、缶コーヒーの昨年の販売額(12月末時点)は5043億円の見込み。10年前に比べて約3割減った」(朝日新聞デジタル21年2月26日

 そこで、缶コーヒー業界ではなんとか「巻き返し」をしたい。まず、「缶コーヒーはおじさんの飲み物」というイメージが定着しているので、若い世代にグビグビ飲んでもらわなくてはいけない。では、若い世代が今飲んでいるものは何かというと、「エナジードリンク」だ。

 実はエナジードリンク市場は、缶コーヒーと対照的に右肩がりで成長している。大容量サイズのものなどが販売され商品数も増えたことで活況なのだ。

 さて、こういう状況を踏まえて、「若い世代に受ける缶コーヒー」をつくろうと思ったらどういう発想になるのかというのは、容易に想像できよう。コーヒーにもエナジードリンクにも「カフェイン」が入っている。ならば、この共通点にさらにエッジを立てて、「エナジードリンクのようなコーヒー」を開発しようとするのは、自然の流れではないか。