「ちょっと何言っているかわからない……」
同じ内容の話なのに「分かりやすい人」と「分かりにくい人」はどの職場にも存在する。『頭のいい人が話す前に考えていること』を上梓した安達さんは、コミュニケーションが苦手だったにもかかわらず、ひょんなことからコンサルに入社し、コンサルタントとして3000社1万人ものビジネスパーソンと対峙してきた。その中で「あの人頭いい」と信頼されている人は間違いなく「話の分かりやすい人」だったと言う。本記事では、「分かりやすい人」と「分かりにくい人」の差を考えながら、話し方のコツを紹介します。

頭のいい人が話す前に考えていることPhoto: Adobe Stock

 コンサルタントとして様々なビジネスパーソンに会う中で、私は「話のわかりやすさ」にはかなり個人差があると感じていた。

 同じ内容を話していても圧倒的に「話の分かりやすい人」と「分かりにくい人」がいるのだ。

 そして組織の中で信頼されている人はみな、話の分かりやすい人だった。

 その違いは何か? 観察しているとさまざまな違いがあることに気づいた。

 中でも特徴的な違いを8つ紹介しよう。

 これは、「分かりにくい話を分かりやすくするコツ」でもあるので、一度でも話していて相手から怪訝な顔をされたことのある人は、試してほしい。

1.「結論」から話すか、「過程」から話すか

例:「今日の打ち合わせの結果どうだった?」と聞かれたとき

 話の分かりやすい人は「うまくいきました」「イマイチでした」と結論から話します。

 話の分かりにくい人は、「最初に○○の議題が有りまして、XXさんが○○と報告しました。そして…」と、過程を1つ1つ述べます。小説や映画など、「過程」を楽しむ場合は問題ないのですが、これは「分かりやすい話」ではありませんね。話は結論からはじめましょう。

2.「具体的」に話すか、「抽象的」に話すか

例:「仕事の優先度はどのようにつける?」と質問されたとき

 話の分かりやすい人は「まず、タスクを書き出します。それら1つ1つに納期と、重要度を1から3の三段階に分けて書き付けます。納期までの日数と、重要度を掛け算して、数値の高い方から並べます。それを優先度とします。」などのように、具体的に回答します。

 話の分かりにくい人は、「早くやらなくちゃいけない仕事や、大事な仕事の優先度を高めます。」と回答します。これは「早くやらなくちゃいけない」「大事な」の中身が判然とせず、話が抽象的でよくわかりません。話は具体的にしましょう。

3.「聞かれたこと」を話すか、「自分が話したいこと」を話すか

例:「今日はどのお客さんに行った?」と聞かれたとき

 話の分かりやすい人は「A社、B社、C社を回りました。」とだけ、簡潔に答えます。

 話の分かりにくい人は「A社はすごい話が盛り上がりまして、良かったです。B社は担当者が不在で、連絡先を教えてもらって、やっと捕まえました…」と、聞かれていない部分についての話が長いです。会話としては悪くないのですが、話のわかりやすさは今ひとつです。話は「聞かれたこと」を簡潔に答えましょう。相手が知りたいことがはっきりしている自信があれば、それを+αとして付け加えるのもいいでしょう。

4.「相手の反応を見て言葉を変える」か、「一律の表現を使う」か

 専門用語を使いたいとき、話の分かりやすい人は、専門用語を出して聞き手の顔が曇ったら、次から専門用語ではない言葉を使います。逆に、相手がその用語を理解しているようであれば、積極的に使ってみます。このように、リアルタイムに言葉を変化させます。

 話の分かりにくい人は、相手によらず、一律の言葉、一律の表現を使います。話すというのは当然ひとつのコミュニケーションですから、言葉以外の要素も加味したいところです。話は聞き手の反応を見て、言葉を変えながらしましょう。

5.「全体から入る」か、「詳細から入る」か

例:「将棋」を知らない人に将棋のやり方を伝えるとき

 話の分かりやすい人はまず「2人でやるゲーム」「コマを動かして、相手の王様を取れば勝ち」という最も大きなルールを相手に伝えます。次いで、「駒の種類」「最初の駒の並べ方」「駒の動かし方」「駒のとり方」「取った駒の使い方」といった具合に、全体から詳細へと順番に説明を行います。

 話の分かりにくい人は、いきなり「駒の動かし方」や「成(なり)のルール」から説明したり、あるいは「反則」についての説明を入れてしまったりと、詳細から、構造を意識しないで話します。理解に役立つイメージの共有は、やはり全体像から説明されることで可能になります。話は全体から入るようにしましょう。

6.「相手の理解のスピードにあわせる」か、「自分のペースで」か

例:「インターネットとは何か?」を、小学生くらいの子どもに説明するとき

 話の分かりやすい人は「コンピューターってわかる?」からはじめます。子どもが「お家にあるパソコン」とか、「学校で見たキーボードのついている機械」、「スマートフォン」などを想像したら、次に「じゃあ、コンピューター同士って、つながってるよね?」と、メールなどの事例を挙げて伝えます。それが相手にわかったら、最後に「そういうコンピューター同士のつながったものを“インターネット”って呼ぶんだよ」と伝えます。

 話の分かりにくい人は「コンピューターがつながったものをインターネットって呼ぶ」と、相手の理解の速度を考えません。相手は複数のことを同時に理解しなければならないので、話についていくだけで大変です。途中で相手の理解を確かめるために、「ここまでは大丈夫?」などと聞くのも大切な共有ですね。話は相手の理解スピードに合わせてしましょう。

7.「こそあど言葉」を避けるか、「こそあど言葉」を多用するか

例:申請書を部長に渡してほしいとき

 話の分かりやすい人は手抜きをせず「申請書を部長に渡しておいて」と言うでしょう。

 話の分かりにくい人は「これをあの人に渡しておいて」と言います。状況をかなり共有できていない限り、「これ」「あの」が何だかわかりません。「こそあど言葉」とは、「これ」「それ」「あれ」「どれ」に代表されるような指示代名詞の総称で、便利ではありますが、話はなるべく「こそあど言葉」を避けてするのがいいでしょう。

8.「脱線」するか、しないか

例:システムトラブルが起きた際に、役割分担についての話をするとき

 話の分かりやすい人は「ある話題」がきちんと終わってから「次の話題」に移ります。

 話の分かりにくい人は「役割分担」を相談している最中に突然、「あ、次のユーザーテストはいつでしたっけ?」と、本来「役割分担」をした上でするべき話題を持ち出すことがあります。

 話が脱線すると、そもそも何の話をしていたかについて立ち返ることが必要になり、時間もロスします。1つの会話を終わらせてから、次の会話をはじめるようにしましょう。

 

 上記のことを全て同時に意識することは難しいかもしれない。

 しかし、どれも分かりやすく話すには重要なことなので、ひとつでもいいので話す前に意識しみてはいかがだろうか。