私は教育者であり、具体的な仕事は数字に強い人材・組織を作る教育を提供すること。

 私はこれをビジネス数学と呼んでいます。その内訳としては大きく「教える」「広める」「育てる」の3つがあります。

 まず「教える」とは、企業などからご依頼いただく研修講師やコンサルティングのこと。「広める」とは書籍やメディアの取材などを通じて私の専門分野のことを広報すること。「育てる」とはビジネス数学を指導できるインストラクターを育成することです。

 最後の「育てる」について補足します。一般論として、教育に必要なものは大きく3つあります。教材・学び舎・指導者です。この中で最も重要なのは指導者だと思っています。なぜなら良い指導者がいれば必然的にその人物が良い教材を作るでしょうし、良い学び舎を作ることもできるからです。だから私はビジネス数学を指導できるインストラクターの育成にも力を入れています。

STEP1 相手が理解するために必要な最低数の要素を挙げる
→要旨、活動内容の2つ
STEP2 その要素に順番をつける
→「要旨→活動内容」の順番
STEP3 各要素について、それを相手が理解するために必要な最低数の要素を挙げる
・「要旨」は1つ。「活動内容」は教える・広める・育てる、の3つ
STEP4 その要素に順番をつける
→「教える→広める→育てる」の順番

 これを図解すると、下のようなものになります。ぜひじっくりご覧いただきたいのですが、この図は「塊」と「矢印」で構成されていることが直感的にも伝わるはずです。つまり「塊」は要素を表し「矢印」は順序を表します。

 因数分解するとは複数の要素に分けることですが、それだけでは人に伝えることはできません。それら要素に順序という概念を導入しないと、人に伝える内容にならないのです。

 極めて重要なことを申し上げます。わかりやすく伝わる内容は、このように図解することができ、そしてそれは必ず「塊」と「矢印」で表現できます。私はあなたにぜひこの感覚を持っていただきたいと思っています。

 感覚ということは、本書を読み終えてすぐに身についているものではありません。普段から少しずつ何かを継続し、習慣化し、定着させ、身体に覚えさせることが必要になります。そのための具体的な手段が、先ほどの「STEP1」から始まる手順で図解することなのです。

 もちろんここであなたは「普段、人と話をしなければならない場面で、いちいち事前にそんなことできない」とツッコミを入れたい気持ちになるはずです。その通りだと思います。だからいきなり本番でそれをやろうとするのではなく、それが可能な状況において少しずつ練習をしてみて欲しいのです。

 例えばあなたが明日、人前でスピーチをするとします。本番では難しくても、前日の準備段階では可能ではないでしょうか。あるいはテレビでニュース番組を観ているときに「政治と宗教」という話題が取り上げられていたとしたら、そのテーマにおけるあなたの主張を家族や友人にどう説明するかを考えてみてはどうでしょうか。そしてそれを考える際にただ漠然と考えるのではなく、紙とペンを使いながらその説明内容を図解してみるのです。

 もしスムーズに「塊」と「矢印」で表現できるのであれば、おそらくその話はとてもわかりやすく相手に伝わるでしょう。一方で、もしスムーズに図解できないとするなら、もしかしたらあなたは「政治と宗教」というテーマにおける持論がまとまっていないか、そもそもそのテーマに対する理解が足りないのかもしれません。その状態のままなんとなく相手に話をしても、単に伝わらない話になってしまう可能性が高いでしょう。

 このようなことを日々のちょっとした場面に動作として取り入れることによって、あなたの身体が(頭脳が)物事を「塊」と「矢印」で表現することに慣れてきます。それはつまり因数分解することに慣れてくることと同義です。あなたのコミュニケーション能力はもちろん、思考力もまとめて鍛えることができる一石二鳥の習慣です。ぜひ取り入れてみてください。