現段階でのPSA検査の結論としては、次のようになります。

①前立腺がんを「発見」するには確実に役に立つ検査
②ただし寿命を延ばす影響があるかどうかは確定的な根拠はない
③比較的新しい検査なので、今後の研究で判断が変わるかも

PSA検査を受けるべき人は?

 PSA検査は「過渡期」の段階にあり、議論にはっきり決着がつくのはもう少し先になりそうです。現時点では、「メリットとデメリットを並べて比較して、自分で決める」しかありません。

 例えば、「前立腺がんの家系なのでリスクが高いから、定期的に確認しておきたい!」という人はPSA検査を受けるほうがいいでしょう。一方で、「がんが見つかったら絶対に心を病んでしまう。有効性が証明されていないのも不安」という人は検査を受けないほうがいいかもしれません。

 個人的には、家系に前立腺がんの人がいる場合は、がんのリスクが上がるのでPSAで確認したほうがいいと考えます。

 今後もし「PSA検査が死亡率を下げる」と有効性がはっきり証明されれば状況は変わってきます。いつの日か、すっきり皆さんにPSA検査を勧められる日が来るのを心より願っています。

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)

【出典】
※1 US Preventive Services Task Force. Screening for Prostate Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement. JAMA. 2018 May 8;319(18):1901-1913.

※2 The Japanese Guideline for Prostate Cancer Screening. Jpn J Clin Oncol;39: 339-351(2009).

※3 Richard M Martin,et al. Effect of a Low-Intensity PSA-Based Screening Intervention on Prostate Cancer Mortality: The CAP Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018 Mar 6;319(9):883-895.
※4 Paul F Pinsky,et al. Extended follow-up for prostate cancer incidence and mortality among participants in the Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian randomized cancer screening trial. BJU Int. 2019 May;123(5):854-860.
※5 Jonas Hugosson,et al. A 16-yr Follow-up of the European Randomized study of Screening for Prostate Cancer. Eur Urol. 2019 Jul;76(1):43-51.
※6 Alexandre R Zlotta,et al. Prevalence of prostate cancer on autopsy: crosssectional study on unscreened Caucasian and Asian men.J Natl Cancer Inst. 2013 Jul 17;105(14):1050-8.

※記事初出時より、以下を修正しました。腰椎の読み仮名の位置を修正(2023年4月30日13:15、ダイヤモンド社書籍編集局)