ゴルフ界の王者といえば、タイガー・ウッズだ。しかし、ウッズの活躍にも陰りが出始めている。ゴルフ界の人気はウッズの陰りとともに沈むのか。特集『ビジネスに効く! 最強のゴルフ 王道のテニス』(全18回)の#15では、今年の米マスターズトーナメントの特別レポートをお届けする。(ゴルフジャーナリスト 船越園子)
ゴルフ界の王者=タイガー・ウッズ
マスターズでは悲痛の途中棄権
「ゴルフ界の王者=タイガー・ウッズ」という等式は、この四半世紀以上もの間、崩れることはなかった。厳密に言えば、崩れかけたことは何度かあった。だが、崩れかけても必ず修復され、彼は王者として君臨してきた。
しかし、悲しいかな今は、王者としてのウッズに「陰りが出てきた」と言わざるを得ない。
2021年2月の交通事故で右足に重傷を負って以来、ウッズが公式戦に出場したのは、わずか5度しかない。22年4月のマスターズトーナメントは、命さえ危ぶまれたあの交通事故からわずか14カ月での戦線復帰。それだけでも驚異的な復活劇だったが、予選通過も果たして47位に入ったことは、まさに奇跡のカムバックだった。
ところが、次なるメジャー大会、5月の全米プロゴルフ選手権は右足の激痛で途中棄権。7月の全英オープンは予選落ちとなった。今年は、ウッズ自身が大会ホストを務める2月の米PGAツアー「ジェネシス招待」にプレーヤーとして出場し、予選を突破して45位タイ。そして迎えたのが、4月のマスターズだった。
過去5勝を挙げたオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブにやって来たときのウッズは「ここで戦えることがうれしい」と戦意が高まっていることをアピールしていた。
しかし、悪天候による不規則進行と強まる風雨、激しい寒暖差は、まだ回復途上の右足を抱えるウッズを苦しめていった。カットラインぎりぎりで予選を通過したものの、ウッズの表情は険しくなる一方だった。
至近距離で眺めていたという有名インストラクターのジョナサン・ヤーウッドは「タイガーは途中で何度もテレビカメラに背を向けてしゃがみ込み、背中を震わせながら右足の痛みに耐えていた」と語った。そして翌日、ウッズは第3ラウンドの残りホールをプレーすることなく、棄権した。
悲痛なウッズの姿を目にするにつけ、彼のアスリート生命は、あとどれぐらい残されているのだろうかと心配になる。4日間を戦い通すことがなかなかできない状況にあるウッズに陰りが出ていることは、もはや否定できない。