また、小中の連携がとれていないことも問題の一つだ。文科省にこの問題への対策を問い合わせたところ「小学校から中学校への円滑な接続を図ることとしているところです」という回答。解決への具体策は示されていなかった。現場の状況は深刻で、中学校教員が小学校の授業見学を求めても断られることもあるという。小学校での英語授業の内容は学校ごとにばらつきがあるため、本来であれば入念な引き継ぎが必須のはずだ。

 小学校英語必修化や新学習指導要領によるマイナスの影響は、中学生の成績に出てきている。単語数や文法項目が増えただけでなく、教科書のページ数もゆとり教育時代の1.6~2倍に。それを「40人学級でオールイングリッシュ」で教えるのだから、取り残される子が出ないほうが不思議だ。しかも学習内容が増えたため、復習する時間もとれず、ただただ授業をこなすことに追われてしまうという。

平均点は下がり気味

 中学1年の最後の授業で、ある教員の元に生徒からこんな感想が届いたという。

「一生懸命勉強したのに、テストの点がひどくて涙が出てきました。読めないし、書けない。意味が全然わからない。理解できている子を見ると、どうして自分だけ、と考えてしまいます」

 先の区立中英語教員によると、「テストの平均点は下がり気味で、しかも真ん中がいない『ふたこぶラクダ』のような成績分布に変化した」という声が教員の間で多数上がっているという。

 現場の先生に委ねられたコミュニケーション重視の小学校の授業。高度化した内容をオールイングリッシュで教えるようプレッシャーがかけられる中学校の授業。全ては現場の教員と子どもたちの努力に委ねられた今、うまく教えられなかったら……、授業についていけなかったら……。「自己責任」だと切り捨てられてしまうのだろうか。(ライター・黒坂真由子)

AERA 2023年5月15日号より抜粋

AERA dot.より転載