不満をぶちまけるのも
「フキハラ」の一種

 さしたる悪気もなく起こってしまう「フキハラ」は、知らず知らずのうちに誰もが加害者にもなりえます。

 そんな「無自覚な加害者」にならないよう、イライラした気分を抱えているときは、極力他人から距離を置くほうがよいでしょう。

 また、嫌なことがあると、その不満を誰かに聞いてもらいたいと私たちはつい考えてしまいますが、自分の「不機嫌ノーラ」が相手に想像以上のストレスを与える可能性は常に気に留めておくべきです。

 そういう意味では「イライラしているときはそれが治まるまで一人で過ごす」というのは、大人として守るべきマナーなのかもしれません。

 そもそも「嫌なことを誰かに聞いてもらうとスッキリする」というのも、かなり疑わしいということを示すデータもあります。

不機嫌なときの脳波不機嫌なときの脳波(本書より)。 拡大画像表示

 上に示したデータは、カンカンに怒っている人の感情を示す脳波です。

 実はこの測定の間、被験者は自分に降りかかった嫌なことを事細かに私に話して聞かせていました。それはまさに「怒りをぶちまける」という表現がぴったりの状況で、データを取らせていただいた手前あまり大きな声では言えませんが、私はきっと相当の「不機嫌ノーラ」を浴びていたことでしょう。

 それはともかく、この結果から改めて読み取っていただきたいのは、「嫌なことを誰かに聞いてもらっている」にもかかわらず、「ストレス度」を示す脳波がどんどん強くなっていることです。この方はたまたま、ぶちまけるたびに怒りが再燃するタイプだった可能性はありますが、これを見る限り、「嫌なことを誰かに聞いてもらうとスッキリする」とは必ずしも言い切れないのではないでしょうか。

 それを証明するデータはまだ取れてはいないのですが、「不満を話すことでストレス度が下がる」という、先程のデータとは逆のケースも実際にはありそうな気はします。なぜなら不満を溜め込むより、大きな声を出すなどして発散するほうが、ストレスが下がることは一般的によく知られているからです。

 ただし、気持ちの整理がつかないうちは確実に「不機嫌ノーラ」を発するので、そばで話を聞いてもらう相手に強いストレスを抱かせる可能性は高いです。

 そう考えると、「誰かに不満を聞いてもらう」という方法は、かなり自分本位のやり方だと言えそうです。

 愚痴に付き合ってもらったのなら、その後で一緒に美味しいものを食べるとか、楽しいことをするなど、少しでも相手のストレスを下げるためのフォローをするのが、せめてもの償いかもしれませんね。