不機嫌な女性写真はイメージです Photo:PIXTA

誰かが叱られている現場に遭遇すると、自分が当事者でなくとも嫌な気持ちになるもの。長年脳波の研究を行ってきた医学博士の満倉靖恵氏によれば、人から発せられる脳波を介して「不機嫌」が周囲の人へとダイレクトに伝わり、ストレスを与えてしまうという。他人のネガティブな感情に振り回されたり、逆に周りを振り回さないための方法を、満倉氏の著書『フキハラの正体 なぜ、あの人の不機嫌に振り回されるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン携書)より一部抜粋して紹介する。

本人が意図する/しないに関わらず
「不機嫌」はまわりに伝播するもの

 フキハラとは、「不機嫌ハラスメント」の略。不機嫌な態度をとることで、相手に不快な思いをさせたり、過剰に気を遣わせたり、精神的な苦痛を与えること。本人が意図している/いないに関わらず起こりうるものです。

 パートナーが不機嫌そうにしているだけで、気分が落ち着かない。人が怒られているのを見ると、自分まで不安になってしまう。自分の不機嫌のせいで、その場の空気を悪くしてしまった。

 あなたにもきっと経験があるのではないでしょうか。これらはどれも「不機嫌ハラスメント」=「フキハラ」です。

 本人が意図する意図しないにかかわらず、「不機嫌」になったら、誰もがこの「不機嫌ハラスメント」を起こす可能性があります。逆もしかり。すべての人が被害者にもなりえ、加害者にもなりうるのが、「フキハラ」の特徴です。

「フキハラ」は、相手が好きか嫌いか、好かれたいかといった感情や、家族か上司かといった相手との関係性にもよらず、「不機嫌」という感情そのものが原因で発生します。

「不機嫌な感情そのものが他人の心に影響を与える」。このことを明らかにしたのは「脳波」です。

 感情は脳の中で生まれます。脳に張り巡らされている神経細胞の間では、常にさまざまな「情報」が微弱な電気信号の形でやりとりされていて、その変化は脳波として測定することができます。

 その脳波を約20年の年月をかけて詳細に解析し、感情を可視化するのが、私たちが世界で初めて開発に成功したリアルタイムで感情を計測できる装置、「感性アナライザ」です。

 感情を可視化したことですぐにわかったのは、「人間の感情はネガティブが主体である」ということでした。

「好き」とか「楽しい」「集中する」といったポジティブな類の感情はなかなか高まらず、高まったとしても維持されにくい一方で、「嫌」とか「イライラする」「落ち着かない」といったネガティブな感情のほうは、ちょっとしたきっかけで即座に高まり、しかも一度上がるとなかなかおさまらないのです。

 これはつまり、人の脳が「ポジティブ」に対してはとても鈍感なのに、「ネガティブ」に対する感受性は非常に高いということをあらわしています。