インターンシップ等がマイナスに作用するリスクも
言うまでもなく、企業は、「学生の就活スケジュールの中に組み込まれれば安心」というわけではない。今夏(2023年・夏)以降は、「オープン・カンパニー(=タイプ1)」や「インターンシップ(=タイプ3・タイプ4)」に参加した学生だけではなく、インターンシップ等に参加できなかった学生をどうフォローするかという大きな課題が浮上してくる。
福重 新たに定義された「インターンシップ」では5日間以上のプログラムが必要であり、運営に要する労力の都合で、企業側はそれほど多くの学生を受け入れることはできません。おそらく、大手企業でも1回の「インターンシップ」で100名以上を受け入れられるケースは稀でしょう。
「オープン・カンパニー」も、短い時間とはいえ、グループワークを行ったりもするので、一定人数の「参加枠」を設けざるを得ません。コロナ禍が終わり、対面形式が増えると参加枠はさらに少なくなります。そのため、企業側としては、エントリーシート(以下、ES)の提出を求めたり、面接や適性検査を行ったりして、応募学生を選別せざるを得ません。つまり、本採用のプロセスと同じことをインターンシップ等の募集段階で行うことになります。結果、“落とされた”学生はどう感じるでしょうか。おそらく、「自分は(企業に)相手にされていない」「(企業から)落とされた、次もダメかも知れない」といったネガティブな印象を持つでしょう。しかも、25卒生からは、「インターンシップ(=タイプ3・タイプ4)」で得た学生の情報を、企業側は本採用で使えるので、学生はインターンシップ等への参加が採用に直結すると考えるでしょう。
インターンシップ等に応募してくれる学生は企業にとっては早い時期に興味を示してくれた「人材の宝庫」です。それなのに、インターンシップ等を行えば行うほど、“落とされた”学生が、入社意欲を持たなくなるかもしれない。採用担当者は、「インターンシップ等がマイナスに作用するリスク」にも注意を払う必要があるのです。
では、そのリスクを避けるにはどうすればいいのか。ひとつめのポイントは「オープン・カンパニー(=タイプ1)」や「インターンシップ(=タイプ3・タイプ4)」に参加した学生へのフォローをこれまで以上に丁寧にし、充実させることだ。
福重 これまでの新卒採用では圧倒的に会社側の立場が強く、ESの提出、適性検査、面接は、ある意味、「落とす」ためのステップでした。たくさんいる応募者の中から、自社に合った良い学生を選抜すればよかったのです。しかし、少子化が進み、学生の立場が強くなって、企業と学生のパワーバランスは変わりつつあります。「(当社への)志望度が高い学生が来ない」といった声をよく聞きますが、志望度の高い学生は誰かが用意してくれるわけではありません。昨今の学生の意識や動向をよく知る企業は、「採用活動における主役は学生である」というふうに意識を切り替え、インターンシップ等においても参加者に対して丁寧なフィードバックを行っています。
例えば、(インターンシップの)プログラムの終了後に、「あなたの強みはこういうところにあって、それを発揮するためにはこうしたらいい」といったアドバイスを送ったり、「あなたはこういう特性を持っているようだから、うちの会社だったらこんなふうに活躍できるのでは?」と未来像を語ってあげる。本採用の面接においても、学生の話に耳をじっくり傾け、例えば、「これまでにこういう経験がありました」「こんなことを頑張ってきました」という話から、本人の強みと弱み、さらには将来のキャリアまで一緒に考える姿勢を見せてあげる――そうすることで、学生は「自分のことを分かってくれている」「将来を一緒に考えてくれている」と感じ、その企業に対してポジティブな気持ちになるでしょう。
学生とさまざまな接点を持ちながら、コミュニケーションを深め、お互いの価値観を共有しつつ、学生の志望度を上げていくことが重要なのです。
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福重敦士さんインタビュー 「HRオンライン」2023年2月9日配信
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福重 25卒生の採用においては、企業は、夏にタイプ1の「オープン・カンパニー」で多くの学生に対してPRを行い、年末から翌年にかけてタイプ3のインターンシップで採用したい学生の囲い込みを行うというのが現実的な動きになるのではないかとみています。