“効果的なフィードバック”とはどのようなものか
インターンシップ等に参加する・しないにかかわらず、これからの採用活動においては学生に対するコミュニケーションの頻度と質を高めることが求められている。その有力な手段として、学生へのフィードバックはどのように行えばよいのだろうか。
福重 インターンシップ等の後に行うフィードバックで多くの企業が犯しがちな間違いは、(インターンシップの)プログラムを担当した社員が「今日、みなさんと一緒に過ごしてとても刺激を受けました」「一生懸命に課題に取り組む姿に感動しました」といったような“個人的な感想”を伝えるだけで終わることです。そもそも、企業の中に人材を育てる文化がないと、社員から学生への良いフィードバックはできません。また、採用担当者は、社員の誰に(インターンシップの)プログラムを担当してもらい、フィードバックを行ってもらうかを熟考する必要があります。
学生が求めているフィードバックは、「今回のインターンシップで○○さんはこう動いてくれたよね。こんな発言をしていたよね。そういう姿勢はうちの会社ならこんなふうにプラスになると思うよ」といったプログラム内での“個人単位での具体的な気づき”を与えてくれるものです。そんなコメントをもらえれば、「この会社は自分のことをしっかり見てくれる」「この会社なら、自分も成長できるのでは……」と思うでしょう。
ただ、採用活動に駆り出された現場の社員にとって、何の手掛かりもない状態で、“個人単位での具体的な気づき”のあるコメントを発することは難しいでしょう。そこで検討したいのが、「フィードバックの仕組みを整えること」です。
インターンシップ等でも、本採用でも、多くの企業では適性検査を行っている。「その結果をフィードバックに活用してはどうか?」と福重さんは提案する。適性検査は、大きく分けて「能力検査」「性格検査」「態度検査」の3つがある。「能力検査」は、いわゆる知的能力を測るものであり、「性格検査」は先天的な面が強い気質や性格に注目するものだ。それらに対して、「態度検査」は年齢や経験とともに変化していく「態度(行動)」に注目するもので、日本健康心理学会の理事長だった本明寛(もとあき・ひろし)先生が提唱した考えに基づいている*2 。
*2 ダイヤモンド社 職場適応性テストについて 参照
福重 学生へのフィードバックにおいては、知的能力や性格に触れることもよいのでしょうが、むしろ、「態度」にフォーカスしたほうが学生にとって多くの気づきがあり、具体的な行動につなげられます。なぜなら、「あなたはこういう気質、性格の人です」とフィードバックされても、本人はなかなか変えようがありません。それに対し、「態度」は自ら変えたり、伸ばしたりすることができるものです。「態度」であれば、これからの動き方だったり、心の持ち方だったりを、本人の努力で変えることができるため、フィードバックされることに向いているのです。また、「態度検査」はインターンシップ時と本選考時の2回受けてもらい、その間の変化を見るといった使い方もできます。