働く人の希望と適性を見て、配属先を決めていく
メガネは250にもおよぶ工程を経て完成する。その多くの工程には熟練した技術が必要だ。キングスター工場でも、丹念にひとつひとつのメガネが作られており、職人の熟練技が織りなす緻密な仕事は、まるで芸術作品を見るようだ。
福井・鯖江の「めがね総合案内サイト/JAPAN GLASSES FACTORY」は、職人たちの目と手がメガネ生産の工程で必要な理由を「精度が高く、使い手に優しいメガネは、機械だけでは作ることができないため」と説明している。吉田さんに、キングスター工場の「職人」について尋ねた。
吉田 「職人」は、ひとつの同じ作業を40年も50年も続けます。力を入れる指が、作るメガネの形で変形していくほどのプロフェッショナルな仕事です。入社して、すぐに職人への道を歩み始める方もいれば、別の部署の仕事を経験してから職人になっていく方もいます。昨年(2022年)の新卒採用の5名は、1名が入社後すぐに職人の道に入り、ほかの方は物流部門など、各部署に散らばりました。工場にはたくさんの仕事があって、さまざまな職種にそれぞれのプロがいます。
どのような人材がどういう職に就くか――「新卒採用者も中途採用者も、本人の希望と適性を見て配属を行っている」と吉田さんは説明する。
吉田 意に沿わないところで仕事をするのは苦痛でしょうし、本人のストレスが溜まるので、まずは、本人がやりたい仕事にできるだけ就けるようにします。そのうえで、仕事にうまくなじめない場合は、スピーディに配置転換をしています。環境を変えることで抑圧されていたものがなくなり、生き生きと活躍できる。異動も大きなチャンスととらえています。
工場で働く人それぞれの気持ちや考えを汲み取っての人的配置――吉田さん自らが従業員一人ひとりと面談を行っていることも「意思の疎通」をよくしているようだ。
吉田 個人面談は、半年に1回行います。どういうメンタル状態かは、一人ひとりの顔を見てれば分かりますし、面談以外でも、悩みのある方は直に伝えてきます。面談では、みんながいろいろなことをおっしゃいます。泣かれる方もいますし、給料の話をする方も。私は、話をじっくり聞き、その方の適材適所を考えたうえで、面談を終えてすぐに配置転換の判断をする場合もあります。対話は重要ですね。私に本音を話してくれない方もいますが、別の幹部とコミュニケーションがとれていれば問題ありません。
配置について言えば、当工場では、新卒社員も中途社員も、入社時に全ての部署の仕事を経験していただいています。新卒社員は、1週間ずつ2カ月かけて全部署を回っていく。その後で、どの部署を希望するかを尋ねているので、嫌な仕事に無理やり就くことはほとんどありません。