しかし、そのときに診てもらった先生から「こんなに小さい年齢の段階で診断できるのはまれなことです。ご両親がちゃんと子どもを見ているからですね」と言われたときに救われる思いがしました。先生いわく、「発達障害ではないかと気がつくのは小学校の入学前の健診や学校生活が始まってから(※1)、なかには大人になって仕事を始めてから気がつく人もいる。それに比べると、早い段階から発達障害だとわかっていれば、子どもを観察できる時間が多くなるため、成長に合わせて対応がしやすくなる」と聞いたからです。こうして先生と家族が二人三脚となり息子の治療がスタートします。
よく観察して対処方法を見つけ出す
とにかくいろいろ体験させてみた
最初はとにかく観察をすることをすすめられたため、じっくりと見ていたところいろいろなことがわかってきました。本来であれば、嫌なことや不快なことがあると言葉で訴えてきます。「食べたくない、歩きたくない、眠い……」などです。しかし、感情を言葉で表せない息子はどうしたのかというと、とにかくよく泣きました。おそらく、自分の思いが伝わっていない、不満などいろいろなことがあって言葉以外で伝える唯一の手段だったのでしょう。散歩や買い物途中など、近所に響くほどの大声でとにかくよく泣いていました。
まだ乳児のときでしたらまわりの人も「あらあら泣いているわね」ですむのですが、歩くようになってから出かけた先で大号泣すると、まわりから「虐待しているのでは?」というように見られてしまいます。そのため、食事中であっても飲食店を出ることもしばしばありました。しかし、それは少しずつ改善していきます。
その方法は「とにかくいろいろ体験させる」ということでした。泣く原因をいろいろ考えてみたところ、初めての場所だから不安になる、嫌いな食べ物ばかりが出てきて嫌だ(※2)、などちょっとずつわかってきたのです。
そこで、同じところに何度も通って「ここは大丈夫な場所なんだよ」と理解させることにしました。もちろん、すぐに慣れるわけではありませんでしたが、それでも何度も通うことで、入り口の場所、トイレの場所などがわかり、以前来たことがある場所だと認識すると、大声で泣くことは減っていきます。
食事については、最初は夫婦で交代しながら泣きそうなときは外に連れ出すという方法を取っていました。しかし、これではゆっくり食事ができません。そこで妻が考えたのが「バイキング」方式の店に行くことでした。バイキングなら好きなものや気になるものを選んで食べることができます。そのうち、食わず嫌いだった食材を食べられるようにもなりました。こうして泣く理由を少しずつ減らしていったところ、3~4歳くらいからは普通に外食できるようになっていったのです。