環境の変化が苦手な子が
環境の変化を望む

 中学校になると新たな問題が出てきます。それは進路です。成績は下から数えたほうが早いほどで、学校の先生からは支援学校もすすめられました(※4)。しかし、好きな科目については驚くほどの知識を持っていたため(※5)、私たちはこれを伸ばす方法はないかといろいろ考えていったのです。環境が変わると慣れるまで時間がかかるのではと心配していたのですが、本人に聞いたところ逆に環境を変えたいので別の学区に通いたいと話してくれました。そこでいろいろと環境にあった高校を探していたところ、妻が生徒の悩み相談に乗ってくれるカウンセラーが常駐している学校を見つけてきたのです。

 早速その学校に本人と一緒に見学に行ったところ、本人も気に入った様子。面談でも先生方からの「勉強できる環境づくりを重視しているので安心してください」との言葉に安心して、その学校に入学を決めました。最初は環境が変わることで不登校などを心配していましたが、それは杞憂に終わりました。勉強に集中できる環境であったこともあり、成績がぐんぐん伸びていったのです。

 カウンセラーが常駐しているのも幸いでした。生徒間でよくありがちな悩みもすぐに相談に乗ってくれて、先生にもきちんと報告され共通認識を持っていただいていたため、本人も気持ちよく学校に通えていったのです。こうして成績は常にトップクラスとなり、今年ついに志望の大学へと進学することができました。現在も大学に通いながら、自分の好きな学問を研究しているようです(※6)。

公認心理師からのアドバイス
(※4)特別支援教育を受けると、なかなか通常教育に戻るのが難しいという側面もあります。これは今後の課題ともいえるでしょう。また、親御さんが悩みがある場合は、自分のなかにため込まず、できるだけ多くの人に相談したほうがいいでしょう。
(※5)ときには驚くほどの記憶力を持っている子どももいます。しかし、通常は時間がたつと記憶はあやふやになっていきますが、このような子どもはすべて記憶していくため脳が疲弊してしまいます。オーバーヒートになってしまわないよう、適切に休憩をとらせるなどまわりが配慮するよう心がけましょう。
(※6)将来のことを考えて、小さいころから「仕事」に目を向けさせるのが大事です。その仕事はどんなことをやるのかなどを家庭内でもきちんと説明し、体験させることが重要です。

家族も大きく変わるきっかけ
決してネガティブにならない

 これはあくまでも私たち家族の例であって、それぞれの環境によって全員が同じような結果になるとは限らないと思います。しかし、最初に診てくださった先生から「この子は実年齢より5歳年齢が若いんだと思って見ていてください。そのうち成長が追いつくこともあると思いますよ」という言葉を信じて育ててきました。

 もちろん、本人の成長もあると思いますが、家族も大きく変わるきっかけになったのも事実です。このような弟を持った娘は、幼い子どもの面倒を見ることを当たり前と思うようになり、現在は幼稚園教諭、保育士、小学校教諭の免許を取得し、子どもたちと関わる職場で働いています。

 私たち夫婦も大変なことばかりでしたが、今振り返ってみれば、面白いエピソードもここに書ききれないほどたくさんありました。だからというわけではないでしょうが、発達障害は決して家族がネガティブに考える必要はないと切に思っています。