支援教室に通う「通級」を巡り
小学校で起きたとある事件

 しかし、小学校に入ると新たな問題が発生します。それは「通級」という制度でした。そのころ住んでいた自治体では、週に1回別の学校にある支援教室に通うことになっていたのです。通うことについて本人は特に気にしていないようでしたが、まわりの子どもたちはそうではありませんでした。「なぜ、あいつだけ授業の途中でどっかに行くの?」となり、授業を抜け出して別の学校で遊んでいるのはズルい、となってしまったのです。

 小学校の高学年であれば、先生が理由を説明することである程度は理解できるでしょう。しかし、まだ低学年の子どもたちにとっては、いくら先生が説明したところでなかなかわかるものではありません。最初は軽い気持ちのイジリですが、だんだんエスカレートしていき「週に1回授業を抜け出す奴」となって仲間外れの対象になっていきます。こうなってくると小学校そのものが嫌な場所へと変化していき、次第に登校を拒否するようになっていったのです。

 そして事件が起こります。私自身は自営業であったため、普段はその日にあった出来事などを必ず聞くようにしていました。しかし、ちょうどそのころ体調を崩して入院してしまっており、様子をうかがうことができていませんでした。そこに近所の中学校に通う娘から、どうやら小学校で息子が飛び降りようとしたと連絡が入ったのです。面会時間ではなかったものの、病院に事情を話して会って話を聞くことにしました。

 どうやら私が入院したことによる心の動揺があった時期に、当時の担任の先生が聞くに堪えない暴言を吐き、周囲の子どもたちも面白がって一緒になっていたため、自暴自棄になってそんな行動をとってしまったというのです。これにはさすがに怒り心頭でしたが、怒ったところですぐに改善できるものでもありません。そこで私は「嫌なら無理して学校に行かなくていいよ」と伝えました。勉強自体は自宅でもできますし、嫌な場所で嫌な思いをするくらいなら自宅のほうがマシです。もちろん、このこと自体を泣き寝入りするつもりはまったくありません。

 退院後、校長や当時の担任、教育委員会などとも何度も何度も話を重ね、改善策を求めました。その後は、通級の頻度が減り、逆に支援学級の先生が通常の学校に巡回指導することになり(※3)、ほかの子どもたちも「ああ、違う学校で勉強していたんだ」と理解が深まり、その後は大きな問題に発展することはありませんでした。

公認心理師からのアドバイス(※3)何か問題が起きた場合、落ち着かせる(クールダウンさせる)ためにその場を離れるという指導方法をとる場合があります。これは「タイムアウト」とも言います。しかし、その場所から遠ざけて問題を先送りするだけなのであまり推奨はしません。何か問題が起きたときには、その場から遠ざけずに本人と一緒に解決していくのがいいと思います。