脳卒中や心筋梗塞は
突然の病ではない

大西 がんの他に、日本人の死因として挙げられるのは、脳卒中、脳梗塞、そして、心筋梗塞もあります。これらは血管系の病で、血管が傷んでいて、詰まりやすくなって、詰まってしまったら、詰まった先の細胞が死ぬという病気です。詰まった血管が脳にあれば脳梗塞。心臓にあれば心筋梗塞で、実はこれも予防も予知もできるんです。

秋山 ストレスの高い仕事を喜々として元気そうにこなしている人が突然なるという印象を持っていました。

大西 糖尿病、高血圧、高コレステロール血症の人や、喫煙者の血管は傷みやすくなっており、そこにストレスが加わるとより、損傷がひどくなります。詰まりそうな血管があれば、詰まったところを広げる、詰まりにくくなる薬を飲む、血糖値や血圧、コレステロール値をコントロールしつつ禁煙するなど予防もできて、実際に心筋梗塞の死亡率はかなり減ってきてはいます。「血圧は高いくらいの方が元気でいいんだ」などと間違った知識を持っている人もいて、突然発症すると考えられがちなのかもしれません。

秋山 男性に多い気がするのですが、暴飲暴食や喫煙者が男性の方が多いからでしょうか?

大西 平均すると、女性の方が痩せているから糖尿病や高血圧症になりにくいという理由もあるかもしれませんが、実は女性ホルモンには血管を守る作用があり、14歳くらいから50歳くらいまで約35年間は、女性の血管は男性より傷みにくいのです。女性が長生きなのは女性ホルモンという「下駄を長年履いている」からなんです。

 そのため、更年期以降の女性では、脳梗塞、心筋梗塞での死亡率がぐっと上がります。更年期にホルモン療法を実施していた女性が、更年期を過ぎても、補充を続けると、脳梗塞、心筋梗塞になりにくいという説もあります。

秋山 まったく知りませんでした。組織にあてはめると、予算を削られて、いわゆる「血管が弱って栄養が行き渡っていない」部署で不祥事が起きることが多いのですが、血管が弱っているのだから病気になって当たり前ということなのかなとも思いました。

大西 会社と血管が違うのは、会社は各部署に対して予算が傾斜配分されるかもしれませんが、人間の体内は全部均等に「予算」を配分されることです。全部がつながっているので、心臓に行く血管がぼろぼろなら、必ず脳に行く血管もぼろぼろなんです。全体的に状況を良くしておかなければなりません。その地盤にあるのが血糖値、血圧、コレステロールです。ある日突然倒れた人も、どこも痛くもかゆくもなくても、実は全身の血管が傷んでいて、地盤から崩れ出していたということなんです。

秋山 にわかに自分の血管が心配になってきました。

大西 血管の健康度を知りたいと思ったでしょう?動脈はほとんどが身体の深部を通っていますが、頸動脈だけは体表近くを通っているので、エコーで簡単に血管の状態を見ることができます。不安なら、ぜひ循環器内科や血管外科を受診してみるといいでしょう。車検のように年に1回血管のエコー検査を受ける人もいます。

 そして、5大死因の一つである肺炎とは、外的なものと内的な免疫の攻防の結果です。加齢によって、免疫力は落ちるため、その結果、高齢者は肺炎で亡くなりやすいんです。つまり肺炎は単に症状で、そもそもの原因が何かは語られないことが多い。コロナ禍の初期の頃は、治療薬がなくコロナによる肺炎の死亡率が高かったのですが、今は治療薬ができたので、コロナが原因で亡くなる肺炎は減っています。その時代の薬の開発状況によって、何の肺炎が主な死因なのかは実は変わっているんですよ。

 また、世代別では、40~54歳の死因の2位、3位は自殺(2021年人口動態調査)なので、メンタルケアも欠かせません。