医師・大西由希子×プリンシプル・コンサルティング・グループ 秋山進 対談

今、日本社会全体はもちろん、企業などの職場でも従業員の高齢化が進んでいる。管理職は中高年・シニアの部下の健康状態にも配慮しなければ、職場が回らなくなる。加齢による不調のサインをどう見抜けばいいのか。また、男性にとって女性の健康問題はなかなか話題にしづらいが、女性社員の比率が高まるなか、更年期障害を抱える女性への適切な対応も不可欠だ。朝日生命成人病研究所附属医院の医師・大西由希子氏と本連載『組織の病気』著者の秋山進氏が対談し、高齢化する職場で管理職が気をつけるべきこと、女性の健康問題、そして、がんなどの疾病についての予防リテラシーについて語り合った。前編に続き、後編では、日本人の死因の上位に上がるがんや心筋梗塞などの疾病について、どのように予防すべきか、そのリテラシーについて話題が広がった。(医師 大西由希子、プリンシプル・コンサルティング・グループ代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)

生活習慣病という呼称をやめる動きも
生活習慣改善努力だけで病気にならないわけでもない

秋山進(以下、秋山) ちょっと疑問に思っていたのですが、大西先生が所属する朝日生命成人病研究所附属医院には、「成人病」が冠されています。生活習慣病ではないのですか?

大西由希子(以下、大西) よく気づいてくださいました。もともと成人病は、加齢によってなりやすい病気の総称です。それに対して、ライフスタイルに注目したのが生活習慣病という言い方です。

 しかし、糖尿病、高血圧、脂質異常症などは、もともと遺伝的な要素があり、そこに生活習慣が悪いと発症を後押しするということもあるので、生活習慣が良い人でも遺伝的な要素が強いと発症し得るんです。遺伝と加齢と生活習慣、この3つが合わさって発病すると考えられています。

 生活習慣を変えると発症を予防できる可能性に着目し、生活習慣病と呼ばれるようになりましたが、行いが悪くて病気になったかのような誤解を招くので、この言い方を見直そうという動きが今あります。私たちも、それであえて昔からの「成人病研究所」という名称のまま変えないでいるのです。

秋山 加齢的要素、遺伝的要素もあるのに、病気になったのは努力が足りないからだと言われたらつらいですよね。日本人の主な死因は、悪性新生物(がん)、心疾患、脳卒中、肺炎とのことらしいのですが、加齢によって増す疾病リスクにどう対応したら良いでしょうか。