メディア興亡#24Photo by Shuhei Inomata

経営不振が深刻化する時事通信社で6月下旬にあった定時株主総会で、境克彦社長の解任決議案が社員から提出された。迷走する経営に社員が「NO」を突き付けた形で波紋が広がっている。結果的に解任決議案は否決されたが、同時に境社長の後継者候補の名前が急浮上。四半世紀以上続く営業赤字によってもたらされた閉塞感打破に向けた期待が高まっている。連載『メディア興亡』の本稿では、解任決議案提出の背景や次期社長候補の実名を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)

「バブル崩壊後最低水準」も下回る決算
経営方針を明らかにしない社長に不満爆発

 まず、共同通信社に続く国内2番手の通信社である時事通信社の経営環境について整理する。2013年度に「バブル崩壊後最低の水準」の売上高176億円を計上して以降もさらなる減少傾向が続き、23年度には152億円、純損失12億1500万円を計上した。

 本業での稼ぎを示す営業損益は24年度に36億1000万円の赤字となり、26期連続赤字を記録。現状の時事は「今世紀に入って一度も本業で稼げていない報道機関」である。

 電通株の6.08%(26年6月30日時点)を保有する時事は、配当金で糊口をしのいできた。さらに20年度までの20年間で、時事の売上高5年分に匹敵するおよそ700億円を、電通株の売却で得てきた。だが25年度は頼みの綱である電通グループの赤字転落によって配当金が得られなかった。電通グループの赤字はすなわち時事への「ミルク補給」が絶たれる非常事態なのだ。

 これによって25年度は役員報酬や幹部職員の給与をカット、引っ越し代の節約のため定期人事異動も一時見送られた(詳細は『【内部資料入手】時事通信が役員報酬と幹部給与をカットし社員の異動凍結も…電通の赤字が波及、「もうこの会社にはいられない」社員が嘆く深刻事情』参照)。

 危機的な状況にもかかわらず、時事の経営陣は具体的な収支改善策を示せていない。25年8月、社員向けに公表した「中計2027 再生への最終ステップ」に数値目標は示されておらず、挙げ句の果ては「戦略目標達成には戦略的思考が欠かせない」といった精神論ばかりを打ち出すのみだ(詳細は『【内部資料入手】時事通信の中期経営計画が判明!数値目標ゼロで電通株の配当頼み「26期連続営業赤字」の惨状』参照)。

 境克彦社長は21年の団体交渉で新型コロナウイルス禍による先行きの不透明さを理由に挙げたり、「惰性的に売上高が増える前提の計画を作り、実現したことは1回もない。計画に数値を入れたものを作ると、計画のわなにはまる」と持論を展開したりしてきた。

 経営陣がのらりくらりと具体的な説明をかわし続けた結果、ついに社員の不満が爆発。境社長の解任決議案提出につながった。次ページでは解任決議案を巡る社員の反応や、そこから見えてきた次期社長候補の実名などを、直近の業績も踏まえながら徹底考察する。