がんは大きく
3種類に分けられる

大西 がんに関しては、定期的に検診を受けて、早期発見、早期治療が基本です。にもかかわらず、がん検診の受診率は約50%で、コロナ禍で受診率がさらに下がったことも懸念しています。がんは言わば、「間違った細胞ができてしまう」ことで、加齢による典型的な成人病ですね。

 ただ、一口にがんといっても、(1)遺伝的なもの、(2)感染症由来、(3)生活習慣が引き金になるもの、と大きく3つに分けることができます。(1)の遺伝的なものには、乳がん、大腸がん、膵臓がんなどがあります。「間違った細胞ができやすい」という遺伝的な体質を持っており、その間違った細胞ができやすいのが、乳房、大腸、膵臓ということになります。これらのがんにかかった家族がいれば、遺伝的に同じがんにかかる確率が高くなります。

秋山 女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がん家系だからと、健康な乳房を切除して話題になりましたね。

大西 生きるために必須かどうかという観点だけで考えてしまうと、乳房は授乳以外の機能がない臓器なので、がん化のリスクにおびえるよりは切除するというのは、非常に極端な合理主義的発想ですね。

秋山 リスクマネジメント的にはリスク要因をなくすのは王道なので、そういう目で見れば、不思議ではないです。

大西 そして、(2)感染症によるものとして、子宮頸がん、肝臓がん、胃がんが挙げられます。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス、肝臓がんは肝炎ウイルス、胃がんはピロリ菌が要因です。ウイルスや菌による感染症で炎症が起こると、治癒段階で新しい細胞が急激にできますが、そのときに間違って無限に増え続ける細胞ができてしまうのががんです。感染予防のワクチン接種、菌の除菌などでそれぞれの発がんをある程度予防できます。

 子宮頸がんの原因のほとんどは、性行為感染症なので、オーストラリアでは、女性はもちろんのこと男性にもワクチンを打っていますが、日本ではようやく、女性のワクチン接種の必要性が理解されてきたところです。肝臓がんは、昔は輸血や予防接種の際に、注射針を使い回していて、B型肝炎やC型肝炎の感染率が高かったという経緯があります。胃がんは高齢者でピロリ菌を持っている人が50%以上ですが、若い人では持っている人は減るため、今後は絶滅していくでしょう。

秋山 がんの一部は感染症が原因だったとは。

大西 (3)生活習慣が引き金になるものとは、喫煙・受動喫煙などによって、(2)と同じように炎症を起こし、新しい細胞の一部が「間違った細胞」としてできてしまうものです。咽頭がん、食道がん、肺がん、一部膵臓がんがこれに当たります。(1)から(3)まで、「間違った細胞ができる」という意味で共通していますが、それぞれきっかけが違うということです。いずれにせよ、早期発見、早期治療によって救えるがんが増えています。

秋山 私は父方も母方もがん家系ではないと思って安心していたのですが、今のお話では違うのですね。

大西 家系として遺伝系のがんにかかる確率が低いとはいえますが、秋山さんは世代的にピロリ菌を持っている可能性もありますね。たばこを吸う人の場合は、肺がんや食道がんなどのリスクもあります。