いくら宣伝しても、ツールは使ってもらえない
活用が進まないのは、成功体験がないから

「『Domoを活用してください』と宣伝して回っていた時期もありました。でも、なかなか使ってもらえませんでした。本当に困っていないと人は動かないんです」

 強制しても活用は進まない。男成さんはたびたび営業が集まる会議に顔を出し、「このデータを作るのにどれくらい時間をかけていますか?」「いやぁ、これが結構大変でね」と苦労話を引き出して回った。「この作業を自動化できるかもしれないのですが、ちょっと相談しませんか?」。そうやって興味を持ってくれた人、ひとりひとりの課題に寄り添い、仲間を増やしていった。

「Domoって『あ、データが勝手に加工された』といったように、ちょっとしたアハ体験があって面白いんです。最初の抵抗感さえ払拭できれば、必ず効率化できるし、仕事が楽しくなるはずなんです。大事なのは、今より良くなるイメージを、その人の課題に沿って具体的に伝えることです」

 さらに男成さんは、「活用が進まないのは、成功体験がないから」と言う。いくら便利になる、楽になると言われても、慣れるまでには少し時間がかかるもの。長い目で見れば「やったほうがいい」と分かっていても、目の前の仕事に追われて「今はいいかな」と優先順位が下がってしまう。

「私たちのチームはDXに時間を費やすことができますが、営業の仕事はあくまで営業活動。DXのために本業を疎かにするわけにはいきませんよね。そこで、まずは私たちが営業の代わりにデータを可視化・分析しています。つまり、私たちが成功体験を作り出し、『本当に使えるんだ』と思ってもらうことが効果的だと思うんです。ただ、最終的には自走してほしいので、徐々に権限を渡していきます」