DXにおいて、新しい技術の普及やデジタル人材の育成を進めるために有効なのが「コミュニティ」の運営と言われる。コミュニティによって目的や環境が異なれば、運営方法もさまざま。それでも、うまく回っているコミュニティから、そのノウハウを学ぶのは成功への近道になる。今回は、300人以上のメンバーが参加するアクセンチュアの社内コミュニティ「カスケード式トレーニング」を紹介する。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
※本稿は、黒須義一、酒井真弓、宮本佳歩著『成功するコミュニティの作り方――企業の成長・変革のための実践ガイド』(リックテレコム)の一部を再編集したものです。
「コミュニティって、やる意味あるの?」
「もうかるの?」と質問されるが……
「コミュニティってやる意味あるの?」「で、なんぼ儲かるの?」――企業でコミュニティ活動をしていると必ずと言っていいほど降りかかってくる質問だ。
「コミュニティ」というと一般に、地域の集まりや趣味のサークルなどを思い浮かべるかもしれない。しかし、ことDXにおいて、コミュニティは新たな技術の普及やデジタル人材の育成に寄与する手段の一つと捉えられている。
この場合、コミュニティの生態は大きく二つに分類される。一つは、主に技術活用の促進や人材育成を目的とした「社内コミュニティ」だ。例えば、前回のライオンは、活用ワークショップを開催したり、Microsoft Teamsに専用チャンネルを設置したりして、「LION AI Chat Powered by ChatGPT API」の活用を促進している。
もう一つは、ITベンダーやそのユーザーが運営する「ユーザーコミュニティ」だ。こちらは、特定の製品・サービスのファンを増やし、ユーザー同志の横のつながりを育みながら、ITベンダーとユーザー双方の成長と付加価値の向上を目指していくものだ。
本稿では、『成功するコミュニティの作り方――企業の成長・変革のための実践ガイド』から、アクセンチュアの社内コミュニティ「カスケード式トレーニング」を紹介する。
アクセンチュアの「カスケード式トレーニング」は、クラウドの知識習得と資格取得を目指す社内コミュニティで、現在300人以上が参加している。このトレーニングでは、参加者が毎週少しずつ学習を進め、口頭試問を通じて知識の定着を図っている。特に注目すべきは、生徒が次の講師役を担いながら学ぶことで、理解が深まり学習効果が高まる点だ。ここでは、この方式を編み出した青柳氏と参加メンバーの話から、社内コミュニティの一つのあり方を探っていく。