(3)ビッグモーターが救済されるとしたら
それはM&Aではない

 さて、飛ぶ鳥を落とす勢いで発展してきたビッグモーターという会社自体は間違いなく衰退に向かうでしょう。企業のブランドというものは、本業でここまでの不祥事が起きてしまうと、回復不可能なほどの傷がついてしまうものです。

 これまでは、このような不祥事が起きた企業がたどる道は二通りでした。業績が極端に低迷したのちに破綻を表明して、廃業ないしは民事再生に向かうのが一つの道。そしてもう一つは、ファンドないしは同業他社に買収される道です。

 では、同業他社にとってビッグモーターは有用でしょうか?

 私は、ビッグモーターについては企業やファンドによる買収(M&A)は起きないと予測しています。代わりに営業権が譲渡されることになるというのが私の予測です。

 中古車業界の他社から見れば、ビッグモーターのブランドは「絶対に要らないブランド」でしょう。

 しかし、店舗と工場、在庫車が安く手に入るなら、そこには非常に大きな経済価値があります。人手不足が企業成長のボトルネックになっている昨今ですから、若くて技術のある従業員がまとめて確保できることも魅力です。

 ただ、M&Aできない最大の理由も人材にあります。なにしろサンプル調査によれば、4人に1人が不正に関与しているほどの企業です。管理職のパワハラ体質に関する報道もあります。人気ドラマになぞらえて言えば「腐ったミカン」が心配です。