「恩師」に引き抜かれ
英トッテナムに移籍する説も浮上したが…
さらに昨シーズン終了後には、プレミアリーグのビッグ6に名を連ねるトッテナム・ホットスパーも加わった。昨シーズンまでセルティックの監督を務め、古橋を重用してきたアンジェ・ポステコグルー氏がトッテナムの新指揮官に就任した縁で、一部メディアがトッテナムを本命視したからだ。
セルティック専門メディアの『67 HAIL HAIL』も、前指揮官の名前を挙げながらこう報じた。
「前任者のアンジェ・ポステコグルーとの親密な関係を考えると、キョウゴがこの夏に退団するのではないかと、セルティックのファン・サポーターの間では恐れられていた」
古橋もポステコグルー監督に感謝の思いを抱く。6月の日本代表活動中にはこう語っていた。
「ポステコグルー監督が僕をセルティックに呼んでくれて、一緒にプレーできた2年間は僕のキャリアのなかでも本当に貴重な時間でした。その意味でも感謝しかありません」
それでも、海外メディアで伝えられているようにトッテナムからオファーが来るのか、と問われた古橋は「どうなんですかね。僕にはわかりません」と苦笑。その上でこんな言葉を紡いでいた。
「(代表活動を終えたら)まずはしっかり休んで、また考えたいと思います」
弾き出された結論は、セルティックとの契約をさらに延長しての残留だった。契約満了を迎える4年後に古橋は32歳になる。まず年齢を重視し、特に30歳を超えた選手は厳しく評価されるヨーロッパで格上のクラブへの移籍、いわゆるステップアップを果たすのはおそらく難しくなる。
逆の見方をすれば、古橋がステップアップするには、圧倒的な成績を残した今夏が最初にして最後のチャンスと言ってよかった。こうした状況をもとに、古橋が再契約の末に残留した背景を考えてみる。理由として浮かび上がってくるのは、セルティックというクラブの立ち位置だ。
ヨーロッパではイングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスが5大リーグを形成。さらにポルトガルやオランダ、ベルギー、オーストリア、スイスなどがセカンドグループにつける。
そして、セカンドグループに所属するクラブは、結果を残した若手や中堅を積極的にステップアップさせる。移籍で得られる移籍金収入を、次世代の若手を獲得する原資に充てているからだ。超有望株などごく一部の選手を除いて、移籍金も常識的な金額が設定されるケースがほとんどだ。
スコットランドもセカンドグループの後方につけている。しかし、クラブ間の経済的な格差が世界のなかで極めて大きいスコティッシュ・プレミアシップ(スコットランドリーグ1部)で、財政的に最も裕福なセルティックは、他国を含めたセカンドグループの育成型クラブとは一線を画す。