欧州サッカー「夏の移籍市場」におけるサプライズの一つが、日本代表FW古橋亨梧によるセルティックとの契約延長だろう。昨シーズンのリーグ得点王を獲得した28歳の快足アタッカーは、ファンやメディアから「イングランド・プレミアリーグのクラブへステップアップを果たせるのでは」と期待されていた。そこから一転、古橋が2027年6月までの4年契約を結んだのはなぜなのか。古橋が下した決断の真意と、この先にさらなる強豪チームへ移籍する確率を探る。(ノンフィクションライター 藤江直人)
過去2シーズンで大活躍
今夏は移籍のうわさが絶えず
スコットランドリーグの名門・セルティックのクラブ公式ホームページに、物騒な言葉が登場したのは7月4日だった。
「a major coup」
日本語訳では「大きなクーデター」という意味だが、それほど想定外の驚きを持って受け止められた出来事。それは同日に発表された、エースストライカー古橋亨梧との4年契約だった。
古橋は2021年7月に、J1のヴィッセル神戸から4年契約でセルティックに完全移籍した。昨シーズンを終えて2年を残していた契約を一度破棄。新たに27年6月まで契約を結び直したのだ。
過去2シーズンで公式戦83試合に出場して実に54ゴールをゲット。昨シーズンは27ゴールでリーグ得点王を獲得しただけでなく、リーグ、選手協会、記者協会、クラブがそれぞれ選出する最優秀選手賞を独占した古橋は、3シーズンぶりとなるセルティックの国内三冠獲得に大きく貢献した。
代役の利かない存在となった古橋の残留が、なぜ喜びを通り越して「大きなクーデター」といえるほど衝撃的なニュースになったのか。答えは古橋に関して、今夏にセルティックを退団するとの報道が絶えなかったからだ。
例えばスコットランドの日刊紙『THE SCOTSMAN』は、古橋の契約延長をこう報じている。
「素晴らしい得点率を残してきた28歳のストライカーには、ヨーロッパの多くのクラブが興味を示していた。しかし、新たな契約は彼の将来に関するすべての臆測を終わらせた」
驚異的なペースでゴールを量産していた古橋に興味を抱くクラブとして、イングランド・プレミアリーグのクリスタル・パレスやノッティンガム・フォレスト、ボーンマス、4月の段階で2部に当たるチャンピオンシップからの昇格を決めていたバーンリーなどが挙げられてきた。