強豪移籍の“条件”は
「正式オファー」と「移籍金の満額支払い」

 セルティックが掲げてきた目標はただ一つ。スコティッシュ・プレミアシップで常勝軍団の座を守り続けることだ。これを実現するためには、ベテランや中堅を含めた現有戦力を可能な限り保持し、二強を形成する宿敵レンジャーズをはじめ、追いすがる他のクラブを蹴散らしていく必要がある。

 そのために、セルティックはセカンドグループのクラブのなかでも、所属選手に対して高額な移籍金を設定している。古橋のそれは実に2500万ポンド(45億3000万円)と地元メディアなどで報じられていた。ビッグクラブのトッテナムでも、そう簡単に用意できる金額ではないだろう。

 その上で主軸を務める選手たちと、積極的に契約を延長していく。今夏でいえば古橋に続いて、25歳のFW前田大然との契約も4年間延長。さらにクラブのキャプテンを務め、スコットランド代表の常連でもある30歳のMFカラム・マクレガーとは5年間延長している。

古橋亨梧「セルティックと契約延長」の真意を深読み、強豪移籍の“条件”とは?日本代表・セルティックの両方で、古橋の仲間でありライバルに当たる前田大然(撮影:藤江直人)

 これがセルティックで活躍するほど、格上とされるクラブへのステップアップが難しくなると言われるゆえんとなる。一方で満額の移籍金が支払われれば、たとえ主力でも移籍させる。

 今夏移籍した主力は、右ウイングとして国内三冠獲得に貢献したジョタ。年代別のポルトガル代表に名を連ねてきた24歳の両利きのウインガーはこのオフ、サウジアラビアのアル・イテハドへ移籍してファン・サポーターを嘆かせた。移籍金は古橋と同じ2500万ポンドが設定されていた。

 つまり、この夏の移籍市場において、高額な出費を伴う古橋にはオファーそのものが届かなかった可能性もある。その古橋の契約延長を、地元メディアの『THE CELTIC STAR』は選手サイドからの視点で解説するとともに、この先にステップアップする確率を「万が一」と表現している。

「キョウゴの将来を少しでも長く約束する今回の契約延長は、イコール、日本人ストライカーがセルティックというクラブに満足している状況を意味している。万が一、今後に契約期間を残して彼が移籍する事態になったとしても、新しいクラブからかなり高額な移籍金を得られる安心感もある」

 前出のマクレガーは契約延長に「クラブ側から要請されたときは、何ものにも代え難いほどうれしい気分になった」と心境を明かしている。おそらくは古橋も同じ思いだったはずだ。まだ去就が決まっていなかった6月の代表活動時に、一般論としてセルティックにこう言及していたからだ。

「僕を含めて、セルティックでプレーしている選手のほとんどが、一日でも長くこの大きなクラブでプレーしたいと思っている」

 セルティックは地球上に900万人ものファンがいると推計され、実際に世界の20カ国以上に160を超えるサポーターズクラブが存在する。6万人強を収容する本拠地セルティック・パークはスコットランドで最大規模を誇り、熱狂的なファン・サポーターでスタンドは常に満員で埋まる。