“越境リモートワーカー”が日本企業に必要な理由

 さまざまなメディアでも語られている人材不足や労働生産人口の減少に関する問題は、もはや言わずもがなでしょう。マンパワーグループの今年2023年の調査によれば、日本の企業雇用主のおよそ5人に4人が「必要なスキルを持つ人材の確保が困難である」と回答しています。このような状況のなかで、駐在員の海外赴任に帯同するパートナー(駐在妻・元駐在妻)のキャリア支援を行うCAREER MARKの共同代表・鎌田薫さんは、「人材難の時代に、人材獲得の選択肢を国内だけでなく国外にも広げてみてほしい」「グローバル化、VUCAの時代において、語学力にとどまらず、国際感覚や柔軟性、適応力を持った優秀な駐在妻や元駐在妻の方々を選択肢の一つに」と、私の取材でお話ししてくださいました。

 また、シンガポール在住の西さん(前ページのケース1)を雇用する一般社団法人日本プロポーザルマネジメント協会の式町久美子代表は、実際に、海外在住の求職者(駐在妻)向けに採用説明会や面接を行うなかで、「異文化の中で、新たなことにチャレンジし、切り開いていく力や自ら学ぶ意欲のあるモチベーションが高い人材が多いと感じている」「日本の採用基準に合わないからといって、優秀な人材を採用・雇用しないのはもったいない」とおっしゃいます。

 さらに、女性のキャリア支援事業を展開するWarisの共同創業者・田中美和さんは、「ダイバーシティ&インクルージョンが叫ばれ、人的資本経営が注目を集めるなかで、国境を超え、多様な価値観や知識・スキルを保有する優秀な人材を包括的に採用・雇用していくことこそが、企業の事業成長やイノベーション創出につながるのではないでしょうか」とお話しされます。

 では、こうしたグローバル感覚や異文化適応力を持ちあわせ、自ら学ぶ意欲や働くモチベーションに溢れた人材を継続雇用・新規採用するために、企業の経営・人事担当者が心がけるべきはどのようなことでしょうか。