「トヨタの歴史そのもの」のランドクルーザーから“プラド”の名が外れた深い理由トヨタ自動車の新型「ランドクルーザー」ワールドプレミアの様子 写真提供=トヨタ自動車

トヨタ自動車は、新型「ランドクルーザー」の中核モデルの日本仕様から「プラド」の名称を外し、新たに「250」として売り出す。その決断に至った経緯を見ると、トヨタが自社の未来に対してどのような危機感を持ち、どのように対処しようとしているのかが分かる。(ジャーナリスト 桃田健史)

72年間の歴史を経て、さらにその先へ
「プラド」から「250」になって何が変わったか

「ランドクルーザーの歴史は、トヨタの歴史そのものだ」

 トヨタ自動車が2023年8月2日、都内で実施した「新型ランドクルーザー・ワールドプレミア」で登壇した、トヨタ取締役・執行役員・デザイン領域統括部長のサイモン・ハンフリーズ氏は開口一番、ランドクルーザーの存在価値をそう表現した。

 公開されたのは、24年発売予定のランドクルーザー「250」(プロトタイプ)と、ランドクルーザー「70」(プロトタイプ)。

 これまで、ランドクルーザーに使われてきた「プラド」の名前が消えた。

 トヨタが織機メーカーの一部門から分離独立し、自動車の製造を始めて14年目の1951年、初代である型式「BJ」ランドクルーザーが世に出た。

 その後、72年間にわたりランドクルーザーは進化してきた。

 55年に「20」シリーズ、60年に「40」シリーズ、67年に「50」シリーズ、80年に「60」シリーズ、84年に「70」シリーズ、90年に「70」シリーズに「プラド」が加わり、89年に「80」シリーズ、96年に「90」シリーズ「プラド」、98年に「100」シリーズ、02年に「120」シリーズ「プラド」、07年に「200」シリーズ、09年に「150」シリーズ「プラド」、そして2021年に「300」シリーズへと、ランドクルーザーの歴史が刻まれてきた。

 そこに23年8月、「新型ランドクルーザー」登場という触れ込みで、世界中のランドクルーザーファンから継続生産が熱望されてきた「70」の大幅な改良と、日本では「プラド」に代わるライトデューディーモデルとして「250」が新たに加わった。

 だが、本来ならばランドクルーザーのトップモデルである「300」の21年発売時に、ランドクルーザー全体の新構想を打ち出すのが、ユーザーやメディアに対してより分かりやすい説明だったように思える。

 なぜ、そうならなかったのか?

 その背景には、トヨタが今、直面している「大きく変わらなければならない」という未来に向けた危機感と、「本気で変わろう」とする真剣味がある。