98%の自治体が、15歳年度末まで
子どもの医療費助成を行っている
医療費助成の給付方法には、(1)直接、自治体が医療機関に対して医療費を支払ってくれる「現物給付」、(2)患者が医療機関でいったん医療費を自己負担し、後で自治体から払い戻しを受ける「償還払い」などがある。
窓口での自己負担がなく、無料で医療を受けられると、必要以上に受診する人が増えて、国の医療費が増加する恐れがある。そのため、国は、現物給付方式で医療費助成を行っている市区町村に対して、国民健康保険への補助金を減額するという措置を行ってきた。
これはいわば自治体へのペナルティーのようなものだが、この措置が子どもの医療費助成制度の充実を妨げる要因として、以前から指摘されていたのだ。そのため、未就学児の医療費については、2018年度から現物給付をしても補助金が減額されないように見直されていた。
この減額調整措置の廃止が、前出の「こども未来戦略方針」に明記された。2023年4月5日の参議院厚生労働委員会の議事録によると、減額調整措置の廃止は18歳の年度末までになる予定だ。
つまり、18歳の年度末までは、現物給付の医療費助成を行っても、市区町村の懐は痛まないので、子どもの医療費助成制度を充実できる自治体が広がっていくことが予想されるのだ。
2021年4月1日現在、市区町村別の子どもの医療費助成の対象年齢(入院ベース)は、15歳年度末が810自治体、18歳年度末が892自治体、その他が39自治体だ。15歳年度末と18歳年度末の合計は1702自治体で、全国にある1741自治体の98%に達する。つまり、ほとんどの自治体が、少なくとも中学生の対象年齢までの医療費助成を行っていることになる(厚生労働省「乳幼児等医療費に対する援助の実施状況」)。
このように、現状でも、子どもが15歳年度末や18歳年度末までの間は、無料、または少ない負担で必要な医療を受けられる。さらに、国は「異次元の少子化対策」として、子育て支援策を充実させることを訴えている。こうした環境下では、あえてコストをかけて、民間の医療保険に子どもを加入させる必要性は低い。