「若者の読書離れ」はウソ、しつこいレッテルの裏に“一部の大人”の勝手な失望?2000年代以降は「子どもの本離れ」は事実ではないのに、いまだ事実であるかのように語られ続けている。これはなぜなのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

教育関係者やメディアでは、子ども・若者の読書に関しては誤ったイメージが蔓延し「若者の本離れが進んでいる」としばしば語られます。この20年間で、小中学生の平均読書冊数はV字回復したといいます。そんな中、なぜ「若者は本を読まない」という事実と異なる説が当たり前のように語られるのでしょうか?飯田一史さんの著作『「若者の読書離れ」というウソ 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか』(平凡社新書刊)から紹介します。

「子ども・若者の本離れ」は虚妄である

 小中学生の書籍の読書量は過去最高レベルにまで増えており、不読率は減っている。

 高校生は不読率に関してはピーク時より2割ほど改善され「ふたりにひとりが読まない」状態にある。高校生の平均読書冊数は直近で月1.6冊だが、70年代以降ずっと月2冊以上いったことはなく、横ばいである。「本離れ」とは過去と比べて減っている状態のことだから、高校生についても「本離れした」とは言えない。

 大学生の不読率は上昇し、「ふたりにひとりが読まない」。ただし、大学進学率向上によって従来であれば大学に行かなかった学力層まで進学している。また、入試方法が多様化しており「本を読んで学ぶ」タイプではない学生が増加していると推察される。国民全体に対する読書調査を見ても長年にわたって「ふたりにひとりが読まない」のであり、「大学全入時代」の学生の読書率は、大人全体の読書率とさほどの差がないというだけの話だ。

 ネットやスマホの影響で読書率や読書時間が著しく減少しているという傾向は見られず、日本人は高校生以上になると「ふたりにひとりが本を読み、読書量は全体で平均すると月1~2冊、時間は1日30分程度」になる。