ただし雑誌の読書量は子どもも大人も著しく減少している。しかし「本離れ」云々と世間で言う場合、イメージされているのは書籍離れのことだけだ。

三大ニーズと四つの型

 学校読書調査で上位にあがる本を読んで推察すると、中高生の読書に対する三大ニーズは、

1 正負両方に感情を揺さぶる
2 思春期の自意識、反抗心、本音に訴える
3 読む前から得られる感情がわかり、読みやすい

 である。これを効率的に満たすための「四つの型」が存在する。

(1)自意識+どんでん返し+真情爆発
(2)子どもが大人に勝つ
(3)デスゲーム、サバイバル、脱出ゲーム
(4)「余命もの(死亡確定ロマンス)」と「死者との再会・交流」

 この四つの型はライトノベル、ライト文芸、一般文芸をまたいで確認できる。

 もちろん、これら以外にもニーズを満たす方法は存在する。東野圭吾、『5分後に意外な結末』をはじめとする朝読で人気の短篇集、血縁や友人・恋人などに収まらない人間関係のなかで成長する子ども・若者の姿を描く本屋大賞受賞作などがそれを示している。

 筆者は2000年代以降は「子どもの本離れ」は事実ではないのに、いまだ事実であるかのように語られ続けている、と指摘した。しかし、これはなぜなのか。

大人が読んでほしい本を子どもが読まない?

 ひとつには1980年代から90年代に本離れが進行していた時代の印象に引きずられ、古い認識が語られ続けているせいだろう。主に雑誌市場の急減によって出版市場が約四半世紀にわたって縮小してきたことも、その誤解を強める要因になってきた。歴史的に見れば現在の子ども・若者には活発に書籍が読まれているのに、自治体の読書調査などでたまたま前年比で2~3%不読率が上がると「本離れ」と新聞がさわぎ、SNSでは吟味なき拡散が横行する(不読率が改善したときにはほとんど話題にならず、長期視点が欠如している)。

 もうひとつ大きな理由は、結局のところ、中高生が「大人が読んでほしい本」を読むようになったわけではなく、さらに言えば「子どもに本を読んでほしい」と思うような大人が、平均以上に本が好きな人間だから、ではないか。大人、とくに中高年以上の読者には、中高生が好む本の内容を知って眉をひそめ、「ろくなものを読んでいない」と感じた方もおられると思う。