第二次性徴期の時期の脳の特徴を変えることは誰にもできない

 筆者としては子ども・若者の読書に対して「今のままではダメだ」と“評価”を下す前に、まずは“現実”をそのまま受け入れてほしいと思う。

 もちろん、事実を事実として受け入れた上で、誰がどんなことを考えようと、子どもに何を望もうと、それは自由である。ただ人間が生物学的な制約を負う存在である以上、もって生まれた能力や嗜好を変えることには大きな限界がある。後天的に伸ばせる能力の「伸びしろ」自体の幅が遺伝的にかなりの程度決まっているし、第二次性徴期の時期の脳の特徴を変えることは誰にもできない。

 10代の読書の実態および好む本の傾向に関して、筆者は良いとも悪いとも評価を下してこなかったし、良いとも悪いとも思っていない(「おもしろい」「興味深い」とは思っている)。

 大人たちが憤ったり嘆いたりしても、10代の基本的な性質自体は変えられない。しかし、「こうである」という事実・現実を前提に彼ら/彼女たちと接すれば、単に「こうであるべき」という規範意識を前に出して押しつけるよりも、言葉や商品が届くようになるかもしれない。あるいは、いくらがんばっても変わらないこともあるとか、若者の特性自体は大人どころか当人たちにだってコントロールできないものである、といった現実を受け入れたほうが、大人はムダに疲れたり悩んだりしなくて済む。子どもも、大人から無茶な要求をされずに済み、「最近の若者は」などと批判されることもなく、気楽に生きられるようになるだろう。