抽象的なバリューをそのまま行動評価に組み込むと、評価者も被評価者も本質の理解に至らないまま表面的な評価に終始してしまい、バリュー体現を促す制度になりません。また、お互いのバリューに対する認識や理解も食い違う可能性があり、納得感の低い行動評価になってしまう懸念もあります。
そこで、抽象的な表現であるバリューをより具体化することが必要です。これをバリューの翻訳と呼びます。翻訳のイメージができるように簡単な例を示します。
言語化したバリューは
「平易短文」を意識する

図表:本書より 拡大画像表示
1つのバリューに対して、GoodとNGをそれぞれ5~7つ程度設計することでバリューの理解に役立ちます。翻訳の合言葉は「平易短文」です。なぜなら、行動評価の基準は現実的に人を動かす文章(文字)になるからです。日々の仕事の中で「こう動いてほしい」「こう考えてほしい」「迷ったらこっち」など、個人と組織を実際に動かすテキスト情報が長くて冗長だと理解(認知)のしにくさに起因して反発を引き起こしてしまう可能性があります。「短い」は正義です。不要な要素をそぎ落とすことでバリューの「本質」を抽出します。
この評価基準の設計は、誰にでもすぐにできるほど簡単ではありません。納得のいく品質にたどり着くには一定の経験と訓練が必要です。「できない」と投げ出さずに、まずはアウトプットし何度も現場からフィードバックをもらいつつ、不要な要素は思い切って捨てて研ぎ澄ましていきましょう。このように粘り強く思考・アウトプットし続ければ、「こういうことか」という光が見えてきます。