行動評価にバリューを組み込む
スタートアップの事例

 バリューを行動評価に組み込み運用している事例として、モノグサ社を取り上げます。同社は「記憶を日常に。」をミッションに掲げ、記憶領域の課題解決に取り組む企業です。あらゆる知識を確実かつ最小限の負荷で身に付けることができる、記憶のプラットフォーム「Monoxer」の開発と運営をしており、学校や塾を中心とした教育機関をはじめとして、外国人の方の日本語習得や社会人の資格取得、研修などの幅広い分野で活用されています。

 モノグサ社では、ここでいう「行動評価」を「価値観行動評価」と名付けました。人事制度設計のプロジェクトをスタートする前に、バリューとそのバリューを具体化した行動指針までができ上がっており、制度設計のタイミングで行動指針の翻訳を行い評価制度に接続しました。

 本稿では、4つのバリューのうち「人類への奉仕」というバリューと、そのバリューから導かれた3つの行動指針についてGood事例・NG事例を紹介します。後ほど紹介しますが、実際の人事評価では行動指針それぞれに対して定性的な尺度で評価する形式を取ります。なお、モノグサ社では、評価制度を運用する中で「Goodな評価基準」「NGな評価基準」として定義すると、解釈が多少狭くなってしまうという意見から「Good事例」「NG事例」という表現に修正しました。運用過程で自社流にカスタマイズしたケースです。

図_行動評価の価値基準 モノグサ社の価値観行動評価の事例行動評価の価値基準 モノグサ社の価値観行動評価の事例
図表:本書より 拡大画像表示

 モノグサ社の経営陣との会議では、「本質的インパクト」「全人類」「スケーラブル」「組織拡張」「無意識のバイアス」といったワーディングがよく飛び交います。意識的に強調する場面もあれば無意識的に発している場面もあり、普段から使っていることがわかります。このことから、バリューや行動指針が自然とコミュニケーションの中で使われ、カルチャーとして定着していることを強く感じます。