ドイツの家庭の約半分が、ガスを暖房に使っている。このため2022年の夏には、多くの人々が「2022年から2023年の冬にはガスが不足して、寒さに凍えるのでないか」とか「ガス料金が高騰して、払えなくなるのではないか」という強い不安にかられた。

 ロシアのガス供給停止は、産業界も震撼させた。日本と同じように天然資源に乏しいドイツは、外国から原材料を輸入して、自動車など付加価値の高い製品を作って外国に輸出することで、国内総生産(GDP)や雇用を増やしてきた。ガスや電気が不足したり、料金が高騰したりした場合、企業の生産活動にも支障が出る。2022年夏から秋にかけて、物づくり大国の基盤を支えるエネルギーの供給が脅かされ、製造業界や市民は、一時パニックに近い反応を示した。消費者センターの相談窓口で泣き出す市民も現れた。

「安価な電気やガスを自由に使えるのは当たり前」というドイツ人たちの常識は、2022年2月24日を境に通用しなくなった。

日本のエネルギー自給率はたったの11%!

 日本では「今起きている電気・ガスの値上げは一過性のものであり、いずれ沈静化する」と思っている人が多いかもしれない。だがドイツを襲ったエネルギー情勢の急変は、我々日本人にとっても他人事ではない。

 2021年にドイツが外国から輸入していた天然ガスのうち、ロシアへの依存度は約6割だった。ドイツはウクライナ侵攻後、ロシアによって突然梯子(はしご)を外されて、一時市民・企業はパニックに近い反応を示した。一方、日本は外国から輸入する原油の9割以上を中東地域に依存している。つまり日本の中東依存度の高さは、ドイツのロシア依存度の比ではない。国民生活や経済の土台を支える電気やガスの供給が、外国の事情によって左右されるという点では、日本もドイツと同じ状況に立たされている。

 さらに、国際エネルギー機関(IEA)のデータバンクで日本のエネルギー自給率を調べて、驚いた。2020年の日本のエネルギー自給率は、わずか11%。この自給率は、米国(106%)の約10分の1にすぎない。G7(主要7カ国)の中で最も低い。

 ドイツもエネルギーの35%しか自給できていないが、日本の自給率はさらに低く、ドイツの約3分の1にとどまっている。今日のようなエネルギー危機の時代に自給率が低いことは、世界有数の物づくり大国・日本とドイツにとって、深刻な問題だ。