そんなことをするくらいなら、別の資金繰りの方法はいくらでもある。
リースバックを使わず、通常の手続きで持ち家を売却して、他の賃貸物件に引っ越すのだ。一般的な戸建て賃貸の利回りは5%なので、家賃はリースバックよりも安い。最大で半額程度に抑えられる。
他にもやり方はある。リバースモーゲージという、自宅を担保に入れてお金を借りる方法だ。金利は3%ほどである。そして、リバースモーゲージ型住宅ローンの返済は、契約者が亡くなった後に物件を売却する形で行われる。要は、死ぬまで安心して住み続けられるのだ。
いずれも、リースバックと比較したら、はるかにリーズナブルな方法となる。
「強引に勧誘された」…
自宅売却を巡るトラブル続出
こうした方法を知らない一般消費者に向けて、リースバック事業を積極推進している不動産事業者はかなり儲かる。そして、リースバックに応じた人は後悔するケースが多い。
その証拠に、全国の消費生活センターなどには、自宅の売却について下記のような相談が寄せられているという。
・自宅を売却し、家賃を払ってそのまま自宅に住み続けることができると言われ契約したが、解約したい
・強引に勧誘され、安価で自宅を売却する契約をしてしまった
・解約したいと申し出たら違約金を請求された
リースバックだけでなく他の住宅売却トラブルも含めたデータだが、国民生活センターには60歳以上の一般消費者から年間600件を超える相談が寄せられる年もあるそうだ。泣き寝入りしている人もいるはずなので、契約者はその数倍はいるものと想定される。
相談者全体に占める70歳以上の割合は、2016年には36.2%だったのに対し、20年には52.3%まで増えている。住宅売却トラブルに悩まされる人の高齢化も進んでいるようだ。
さらに恐ろしいことに、不動産事業者に持ち家を売却した場合、契約のクーリングオフはできない。高齢者の生活に悪影響が生じかねないため、国民生活センターは注意喚起や関係機関(国土交通省、全国宅地建物取引業協会連合会など)への要望を行っているという。