筆者はリースバックを
人道的にどうかと思う
なお、不動産取引の勧誘で、「しつこい、長時間、迷惑、脅迫、強引、うそ」などを含む説明は宅地建物取引業法で禁止されている。こうした勧誘を受けた場合は、「免許行政庁に連絡します」と言うと、たいていの営業担当者は引き下がる。宅地建物取引業法違反で行政処分が行われるからだ。
法改正によってこの規制が設けられた結果、不動産事業者は高属性(信用度が高く融資しやすい)の会社員に投資用不動産を売ることがかなり難しくなった。それまでは、会社に勧誘の電話をかける手段が横行していたが、法的に撃退できるようになったからだ。
だが上記の相談内容を見る限り、リースバックは営業担当者の撃退方法を知らない高齢者がターゲットになっている印象だ。こうした勧誘や、法外な価格・家賃の設定に関して、筆者は人道的にどうかと思う。
そして皮肉なことに、リースバック事業を展開している会社には、上場企業のグループ会社・子会社・関連会社などが含まれている。親会社が上場しているということは、それなりの社会的信用はあるはずだが、消費者の利益よりも「業績を伸ばして株主を満足させること」を最優先に考えているのだろう。
最後に、あらためて問題を整理しておく。持ち家の売却後も「賃貸」という形で住み続けられるリースバック契約は、一見すると自宅という資産を有効活用する手段のように思える。引っ越しの必要もなく、売却代金を得ることで資金繰りも一時的に良くなるからだ。
しかし実は、その価格設定や契約内容は、かなり消費者にとって不利になっている。最悪の場合、契約者が大損するだけでなく自宅を失うこともあり得る。