西武池袋店の“土地売却”
計画書上の理論は「完璧」
今、百貨店業界はある意味で二極化していて、地方百貨店は次々と閉店する一方で、大都市圏の旗艦店はインバウンドと富裕層の増加によって成長産業になっています。高島屋や三越伊勢丹、J.フロント リテイリングなどが好業績を上げる中で、この波にいま一つ乗れていないのがそごう・西武という状況です。
そこから反転するための成長のパートナーを探してきたはずが、セブン&アイがファンドの計画をなかなか開示してくれない。それでメディアから先に情報がもれ始めて、その中身が成長戦略ではなく解体戦略だったと分かれば、社員が怒るのは当然です。
ただこの計画、セブン&アイと投資ファンドのフォートレスの立場で見れば一定の合理性を持っている計画でもあります。
2022年度のそごう・西武の業績は総額売上高4963億円に対して営業利益は25億円と3期ぶりの黒字となりました。一方で、純利益はマイナス131億円の赤字です。経営の足を引っ張っているのが、3000億円を超える有利子負債だとされています。
そこで、買収と同時に西武池袋本店の土地を売却するとします。
そごう・西武が保有するのは池袋店の土地の半分(残りの半分は西武鉄道グループが保有)ですが、仮にその土地が2500億円で売れれば有利子負債は大幅に減少し、そごう・西武は黒字体質に変わることができます。計画書上は完璧な理論なので、「これでいける」と思うのも仕方ないと思います。