セブン&アイの盲点は
「テナントの猛反発」「社員の退職」の二つ
それでも、セブン&アイが見落としてしまった盲点が少なくとも二つあったのではないでしょうか。
ひとつは、「テナントの猛反発」です。百貨店のテナントである高級ブランドにとって入居している場所、つまり立地に非常に重要な財産価値があるのです。
これは全てのブランドにとっても言えることで、これまで長い間一等地で商売をやっていて、顧客に認知され来客も非常に多かったとします。そこにある日、新しい大家がやって来て“別の場所に移れ”と言ったとします。当然、抗議をしますよね。
メディアの報道でリークされたとおぼしき買収後のフロアマップを見ると、たとえば今、ルイ・ヴィトンの店舗がある場所にはアップルやライカの名前が書かれています。本館の1Fで営業しているグッチは本館から追い出され、別のビルに移っています。
この図をそれらのブランド本社が報道を通じて見てしまったわけですが、それが大問題になることにセブン&アイは気づいていなかったのでしょうか。
二つめは、「優秀な社員の退職」です。
セブン&アイの得意領域であるコンビニをITビジネスだとすれば、百貨店は人間ビジネスだということです。事業特性が違うのです。従業員の間のウエットさが違うといってもいいかもしれません。
今回、西武池袋本店の売り場面積がほぼ半減することで900人の正社員も相応の数の人たちが職場を失うことになります。セブン&アイはそれに対する雇用を用意することを表明していますが、用意される職場は百貨店の仕事ではありませんし、コンビニの店長かもしれません。
もし計画通りそごう・西武の解体が始まったら、たとえば私が外商の従業員だったらとっとと他社に転職します。腕のいい外商の従業員はどの百貨店でも欲しいものです。インバウンドの接客ができるバイリンガルの従業員も同じです。大手百貨店は人間ビジネスの成長産業ですから、できる社員はどの大手もウエルカムでしょう。
それでそんなことが起きると、他の百貨店との差がますます開きます。
この7月まで労組の再三の要請にもかかわらず対話をしてこなかったところを見ると、セブン&アイは計画がもれると優秀な社員が転職していくという点には気づいていたのかもしれません。