百貨店事業の成長戦略が
「そごう・西武解体計画」へと変貌
そごう・西武の組合とセブン&アイの間に決定的な溝が入ったのは、今年8月初旬のことでした。
従業員の立場を考え、売却を慎重に進めたいとしてきた生え抜きの林拓二社長が解任されたのが最初の事件です。その後、セブン&アイの意をくむ田口広人新社長と組合の間で初めて、売却後の事業計画が提示されたのが、それに続く事件です。
その計画について複数のメディアの報道から明らかになったのは、次のような内容だったとされています。
(1)アメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)」がそごう・西武百貨店の株式を取得後、西武百貨店池袋本店の土地を家電量販店「ヨドバシカメラ」に売却する
(2)西武池袋店の北側にヨドバシカメラが入ることで、西武百貨店の売り場は半減する(ただし当初の計画のうち、ヨドバシの西武池袋1階および地下1階への出店は豊島区との協議を経て一部断念)
仮にこの内容だとすれば、百貨店の労働組合がセブン&アイに対して感じた気持ちは報道されているような「不信感」ではなく、「怒り」に近い内容だったはずです。
というのも昨年、セブン&アイがそごう・西武を売却することを決定した際は、セブンとそごう・西武は「百貨店事業の再成長を目指す」という方向性で一致していて、そのパートナーとしてのファンドを探していたのです。
ところが2度の入札を経て、実際に優先権を得たファンドの事業計画は、そごう・西武最大の財産である池袋駅前の土地を売却してもうけるという「そごう・西武解体計画」だったわけです。