学生と企業の“長期的なつながり”となる「リレーション採用」の価値

今年も、多くの企業・団体で新卒採用の広報活動がスタートした。会社説明会の開催やエントリーシート(ES)の受け付けなど、学生との接触が進み、内々定も出し始めている。コロナ禍が落ち着くなか、企業・団体の採用意欲は高まり、今後、“売り手市場”は続いていくだろう。そうした状況下、中小企業のみならず、大手企業でも、“自社の求める人材”をどう確保するかが重要になっていく。“自社の求める人材”の確保に向けて、「リレーション採用」という新しい手法を提唱し、サービスを提供している株式会社インタツアー 代表取締役社長 作馬誠大さんに、学生とのミスマッチを防ぎ、質の高い採用活動を展開するポイントを聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

コロナ禍における、Z世代の“就活姿勢”の特徴

 コロナ禍における、企業・団体の新卒採用の大きなトレンドがオンライン化と早期化だ。24卒生(主に2024年3月卒業の学部生・院生)は、大学生活が始まった入学時からの“ウィズ・コロナ世代”だが、彼ら彼女たちの就活に向き合う姿勢・価値観はどのような特徴があるのだろう。

作馬 コロナ禍での就職活動(=企業による採用活動)は4年目となり、学生側はオンライン対応に慣れているというだけでなく、オンラインでの情報収集が実際の行動を左右する判断材料になっています。

 私が聞いた、神奈川県内の学生たちの例ですが、企業訪問では東京都との県境である多摩川を越えるかどうかにハードルがあるそうです。興味や関心の高い企業については往復1時間を超える時間や1000円以上の電車代を使って都内まで行きますが、そうでない場合はオンラインで企業の情報を集め、初期段階の接触もオンラインで済ませるのです。

 いまの若者はZ世代と呼ばれています。その特徴のひとつがタイパ(タイムパフォーマンス=時間効率)を重視することです。「できるだけ少ない時間でより多くのことをしたい」という意識が強く、動画を倍速再生したりするのが当たり前です。

 以前なら、合同説明会に1日かけて参加し、関心がある企業ブースを訪ねるだけでなく、興味がなかった企業や名前さえ知らなかった企業にも接触する機会がありました。しかし、世の中全体のオンライン化とZ世代のタイムパフォーマンス重視によって、そうした機会が大幅に減っています。ごく一部の、大手有名以外の企業にとっては、学生との接触の機会をどう確保するかが重要な課題になってきています。

 学生との接触機会をオンラインでうまくつくり出せているかどうかが、採用のための母集団形成や内定承諾率の差につながっていると作馬さんは指摘する。経営層や人事部の採用担当者はどうすれば良いのだろうか。

作馬 多くの企業が「何とかしないといけない」という問題意識を持っているのは確かですが、積極的に手を打っている企業はまだ少数です。

 もちろん、策のひとつは、動画やSNSといったオンラインツールを積極的に活用することです。さまざまな情報をオンラインで発信している企業は学生から選ばれるチャンスが増え、採用における歩留まり*1 も改善する傾向があります。逆に、オンラインでの情報発信が少ない企業は、学生から見れば、よく分からず、存在に気づいてもらえないというケースに陥りがちです。

*1 学生の応募から内定承諾に至る採用フローにおいて、その各過程に進んだ人数の割合のこと

 オンラインツールの活用においては、大都市圏の企業は前向きですが、地方圏は動きが少し鈍いように感じます。また、人員体制やコストなどのリソースの問題から、規模の大きい企業のほうがオンラインへの取り組みが進んでいる傾向もあります。

学生と企業の“長期的なつながり”となる「リレーション採用」の価値

作馬誠大 Akihiro SAKUMA

株式会社インタツアー 代表取締役社長

2006年、経営企画職として綜合キャリアグループ(現:キャムコムグループ)に入社。人事考課制度構築や複数の新規事業開発に携わり、2020年より株式会社インタツアー代表取締役社長に就任。神戸大学 准教授・服部泰宏氏と活動をともにした、企業の採用課題に科学的観点からアプローチする「採用学」や、立教大学客員教授として取り組んだ学生向け「グローバル・リーダーシップ・プログラム」での経験に基づき、企業と学生の双方の課題解決を叶える新卒採用領域に特化したプラットフォーム「インタツアー」を開発。学生と企業が短期集中で互いの自己PRを行い、取り合いを繰り広げることでミスマッチが起こりやすい従来型の新卒採用を変えるべく、学生と企業が早期からつながりを持つ「リレーション採用」を提唱し、より本質的な新卒採用を支援している。