“原石”を見つけ、磨いていくことが企業の仕事

“幼さ”は、“成長の余地がある”ということ――24卒生は、まだ磨かれていない“原石”の者が多いと、谷出さんや採用担当者は見ている。では、そんな彼ら彼女らに、企業側はどう接していけば良いのだろう?

谷出  まだ磨かれていない原石にどう向き合うかは、各企業の採用担当者の腕の見せどころです。私は、「内定承諾してくれない、すでに磨き上がった人材よりも、(企業が)磨いて光る学生を採るとよい」と経営層や人事の方にアドバイスしています。コロナ前の企業は、「磨くこと」を学生自身に任せていました。「自分という存在を自分自身でしっかり磨いたうえで、採用試験を受けてください」と。ところが、これからはそうはいきません。インターンシップや面接を受けた学生とコミュニケーションをとったうえで、企業はその学生の「伸びしろ」を知ることがポイントになります。そして、光る可能性のある原石を見つけたら、企業側が、選考プロセスから入社後にかけて磨いていくこと。自分で磨き上げた学生は、どの採用担当者が見ても優秀なので取り合いになりますから、中堅・中小企業ほど、「磨いていく姿勢」が必要になるでしょう。採用というものは、「すでに基準を満たした者」を選びがちで、「当社の基準を超えていないから」という理由で学生を不採用にしてしまいます。それが、採用枠を満たせないことに繋がっていく。人手不足の売り手市場では、磨き上がっているかの判断ではなく、「原石を磨く」という姿勢が肝心なのです。

 今回のインタビューのテーマである、24卒生対象の「秋採用」について、就活戦線を見つめ続ける谷出さんに伺っていく。

 現在、24卒生は、企業からの内定をまだ持っていない学生、内定を持っていながら就活を続けている学生が混在しているが……。

谷出 毎年この時期は、内定を持っていて悩んでいる学生と内定を持っていないことに悩んでいる学生がいます。内定を持っていて就活を続けている学生は青い鳥を探している状態。そうした学生は、どんな社会人になりたいかがぼんやりしているので、内定を出した企業は、本人のなりたい姿ややりたいことを一緒に探り、言語化してあげるとよいでしょう。「弊社で働いていくと、○○さんはこんなことが実現できるよ」と。それを示さずに、「内定です。弊社に来てください」とだけ言っても、本人は将来像が見えないので内定承諾に迷い、時間がずるずる過ぎていく。私は、採用担当の皆さんにこう尋ねます――「納得のいく就活にするために、皆さんは学生に何を話していますか?」と。学生に寄り添い、一緒にキャリアの道筋を考えていけば、学生は納得して就活を終えられます。本人のなりたい姿ややりたいことが自社の仕事と繋がることを伝えましょう。

 そして、内定をまだ持っていない24卒生は、夏・秋の時期は焦りの気持ちとともに、「どうすればよいか分からない……」と悩んでいる心境なので、企業側は、就活方法や会社選びのアドバイスを本人に送ってあげるとよいですね。すでに内定を持っている学生への接し方と同じように、「弊社で○○をするなかで、あなたのなりたい姿として考える□□に近づけると思うけど、イメージできますか?」と寄り添い、「光る原石」を見つけ、接していくこと。採用枠の埋まっていない企業は、内定を持っていない学生が目の前に現れると急ぎ足で話を進めていきがちですが、その学生のなりたい姿ややりたいことを汲み取ったうえで、自社でどう活躍できるかを本人と想い描くことが望まれます。