短期決戦の秋採用で、企業側が心がけることは?
社会全体がコロナ禍前に戻りつつあるなかで、新卒者の売り手市場が加速し、採用に苦戦している中小企業やBtoB企業が見受けられる。秋採用を行うにあたって、企業側が留意すべきことは何か。
谷出 「企業広報」のような幅広い手段で、「秋採用」の実施を大きくアピールするとよいでしょう。「当社は『秋採用』を、24卒生対象に行います!」と企業サイトのTOPページなどで明示する。ネームバリューのある大企業は話題になることが多く、この方法でも有利ですが、中堅・中小企業にとっても大切なアクションになります。まず、自社の姿勢を発信すること。そして、そのときに、秋採用を行う「理由」も明確に知らせること。たとえ、春・夏で採用枠が埋まらなかった事情があるにせよ、「経営方針を見直し、採用の幅を拡げることにしました」といったふうに前向きさをメッセージしたいです。
さらに、秋の採用活動では、説明会などでスケジュールをはっきり伝えることが大切だと、谷出さんは説く。
谷出 秋からの就活も春のように数カ月かかると思い込み、ネガティブな学生が多いですが、内定の出る日を明確に知ることで、就活生の不安感は減っていきます。秋採用は短期決戦。ギュッと、スピーディなスケジュールであることを伝え、内定までではなく、入社後や入社までに行われる研修やイベントについても話していくことが重要です。
秋採用において、自社を説明するときに、企業側が心がけたいことがあります。春の会社説明会では、業界全体の話をして、自社のポジションや特徴、事業内容を話したはずですが、秋採用に臨む学生には、それでは不十分です。春・夏に内定をもらえず、「自分はダメなんじゃないか」と思っている学生を励ます気持ちで、自社の「就活に対する考え方」を伝えること。内定を受けた時期が春だろうと秋だろうと入社後には関係ないといった話をしていけば、学生は、「この会社は、求職者のことを考えてくれている」「人事の○○さんと話をすると気持ちが落ち着く」というふうに、魅力を感じていきます。
また、内定を持っていない学生に対しても、すでに持っている学生に対しても、「説明会の後に、1対1のキャリア面談を行います」と伝え、実施していくのも良策です。まずは、応募者の話を聞き、「その希望だったら、弊社の○○という仕事でかなうかもしれません」と自社の事業内容と就活生を繋げていく。キャリア面談は、「あなたの就活の悩みにお答えします」という姿勢で行い、(就活に)迷い、悩んでいる就活生が、いまどんな心理状況で、何を求めているのかを考え、解消の手伝いをしていくのが理想です。秋に就活経験のある社員が自分の体験談を語っていくと、リアリティが増しますね。実は、私自身も1社目の内定をもらったのは10月以降で、同期入社社員の内定式はとっくに終わっていました。