東北大学が推進するミラクルな高血圧対策「ナトカリ」って何だ?高血圧の人にとって、減塩を過度に気にしなくてもいい時代がくるかもしれない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「減塩」が難しいときは
「排塩」しよう

 目からウロコの発想かもしれない。高血圧予防には減塩が必須とされているが、慣れ親しんだ食生活を変えるのは難しいものだ。たとえば塩辛い味で育った筆者の母親は、塩分控えめの食事を供されると「他人みたいな味だな」と嘆き、せっせと塩や醬油を足してしまう。体に悪いことは百も承知だが、そうしないと食べた気がしないという。当然というか、40代から高血圧と診断されていた。

 そこに登場したのが「ナトカリ比(バランス)」を整えるという発想だ。「ナト」はナトリウム(塩)のナト、「カリ」はカリウム(野菜・果物・豆など)のカリ。減塩はもちろん大事だが、家族や友人と同じ料理を楽しみたいとき、外食のとき、忙しいときなど、減塩が難しいときには、カリウムを多く含む野菜などを積極的に食べて、ナトリウム(塩)とのバランスを整えればよいではないか、というのである。

 カリウムにはナトリウムの排出を促す働きがあるので、摂取した塩分に応じてたっぷりと野菜を食べれば、まあまあ“なかったことに”できるのだとか。理屈はとてもシンプルだ。

 ただ、実践するにはハードルもある。そもそも「たっぷりの野菜」とは具体的には何を何グラムなのか。自分の「ナトカリ比」はどれくらいなのか。このあたりの疑問を解決することで、それまでどんな対策も効果がなかった住民の高血圧・脳卒中問題の劇的改善に成功した自治体がある。宮城県登米市だ。

 高血圧は血管に障害を起こし、動脈にダメージを与えることで、脳出血や大動脈瘤破裂、脳梗塞、動脈硬化症、心筋梗塞などの重篤な病気の引き金となる。宮城県は脳血管疾患による死亡率が全国的に見ても高く、登米市は、その原因となる高血圧患者の割合が、男性は県内ワースト2位、女性はワースト1位(2015年)という極めて深刻な状況にあった。