そこで登米市が頼ったのが、東北大学東北メディカル・メガバンク機構だった。同機構の寳澤篤教授は、住民の特定健診の際に「ナトカリ計」を用いて「尿ナトカリ比」を測定し、受診者に結果を返却すると同時に、レシピの指導など血圧改善生活に関する情報提供を行なってはどうかと提案した。これが嘘のように効いた。
「登米市のほぼ全ての地区において、尿ナトカリ比と収縮期血圧が低下していた上に、特定健診時の要受診勧奨率も、低下の一途をたどっていました」(寳澤教授)
「2017年から2019年までの3年間、年に一度の健診にナトカリ計を組み込んだだけなのに」と、寳澤教授も驚いたこの施策の詳細は、ダイヤモンド・オンラインで2021年6月「高血圧問題が改善!患者の生活習慣を変えた『超シンプルな方法』」として報じた。興味のある方はそちらをご覧いただきたい。
いいこと尽くしだが
導入にはハードルがある
期待以上の成果に強い手応えを感じた寳澤教授のグループは、この試みを「ナトカリチャレンジ」と呼び、研究の継続と並行して普及活動に乗り出した。ここ2年間の経過について、寳澤教授と同機構講師の小暮真奈氏に話を聞いた。
ナトカリチャレンジはその後、登米市から大崎市、七ヶ浜町、大河原町(いずれも宮城県内)へとエリアを拡大させ、対象も住民だけから自治体の職員、民間企業へと広がった。これまでの取り組みを通じてわかってきたのは次のような事柄だが、今グループは、新たな課題を感じている。
・尿ナトカリ比が高い人は、血圧も高い
・尿ナトカリ比が高い地区では、血圧も高い
・地域での尿ナトカリ比測定が住民全体の血圧に好影響を与える可能性あり
・幅広いエリアで尿ナトカリ比測定は実行可能
・高血圧だけでなく、脳卒中や心臓病のリスクも低下し、疾病にかかる医療費低下も期待