「いいこと尽くしなので、大学が取り組みをやめても、自然に広まっていくのではないかと思っていました。実際のところ、一部の自治体を除き、地域・職域単独での実施には躊躇している印象を受けています」(小暮氏)

ナトカリチャレンジ普及に
見えた課題と関係者の課題

 実は筆者は、ナトカリチャレンジは燎原の火のように、少なくとも県内くらいには一気に普及することを確信していた。だが、そうでもなかったのはなぜだろう。

「1つはコストです。ナトカリ計は1台20万円ほど。気軽に購入できる価格ではありません。もう1つは説得材料です。導入の決定には各地域・職域のトップ陣営の判断が必要なのですが、現状はまだ、実施することで得られる経済効果などの説得材料が足りていません」(小暮氏)

 そこでグループは、ナトカリ比測定による経済的効果を可視化することでこれらのハードルを下げ、普及に貢献できるのではないかと考えた。

まずは2022年度一年限定で、健診会場に限らず「いつでも」「どこでも」ナトカリ比を測定できる「ナトカリステーション」を、登米市、大崎市、仙台市、七ヶ浜町および各種イベント会場に設置し、合計400名が利用した。もう1つ、経済的効果の可視化については、経済学の研究者の協力を得て進めているが、まだ確定的な結果は出ていない。

 寳澤教授は言う。

「国際学会で『ナトカリ計を置くだけで効果が出るが、ただ機械が高いのが問題』と話したところ、海外の人たちからは『一台20万円以下でこれだけの成果が上がるのなら安価だ』
言われました。日本人にもこの感覚を持って欲しい」

 確かに、日本でも高血圧と脳卒中などの関係を実証する調査が進展し、高血圧の治療効果が確認され、また食塩過多が要因と判明したのは1960年代のこと。以来、高血圧対策は生活習慣病予防の筆頭として重視され、進められてきたが、目に見える効果は得られてこなかった。それが、こんなにもシンプルな方法で劇的な効果が認められたのだから、課題解決への協力も含めて、皆もっと積極的にチャレンジするべきではないだろうか。