結婚式にはたびたび奇跡が起こる

 長年、この仕事をやってきて感じるのは、結婚式にはたびたび奇跡が起こるということ。

 創業者である母が結婚式の司会をしていた頃の話です。

 ある冬の日のことでした。その日は朝から晴れていましたが、結婚式の終盤、新婦さまからご両親に向けたお手紙を読むとき、突然、窓の外が雪景色に変わったのです。

 新婦さまはお父さまを亡くされていました。

 新婦さまのお名前は「ゆき」。

 雪の日に生まれたからと、亡くなったお父さまがつけてくれたそうです。

 そんなエピソードを事前に聞いていた母は、今まさに手紙を読み始めようとする新婦さまに向かって、

「ゆきさん、窓の外を見て」

 と声をかけました。

 振り向くと、雪。その瞬間、新婦さまの目から大粒の涙がこぼれ落ちました。

 お父さまが今日の日を祝福するために新婦さまに会いに来られたのかもしれません。

 もし、母がゆきさんのお名前の由来を聞いていなければ、あのひとことはなかったでしょう。

 知っていたから、あのタイミングで教えてあげられた。聞いていたからこの奇跡に気づけた。聞くことの大切さを知った忘れられない出来事でした。