日本は少しずつ、確実に貧しくなっています。それでも平成の時代は昭和の遺産を食いつぶすように生きながらえることが出来ました。しかし、令和の時代はますます厳しさが増していくことは間違いありません。今はコロナのことで皆さん頭がいっぱいになっていますが、この危機が去った時にどんな経済状況が待っているのか。それを考えるとゾッとします。
日本人の貧困化を食い止めるにはどんな方法があるのか?
その一つは、一人ひとりが「投資家の思想」を持つことだと思います。これまで多くの日本人は「労働者の思想」しか持っていませんでした。しかしその思想では、もう未来がないのです。
「投資家の思想」こそが日本の未来を切り開くと私は信じています。少なくとも、その思想を持てた人は、生き残ることが出来ます。
投資をすることがビジネスパーソンとしていかに大事であるかということを知っていただきたいと思い、私は『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)という本を書きました。ここで言う投資とは、チャートとにらめっこして売り買いを繰り返すことではありません。それは「投資」ではなく「投機」です。ギャンブルとなんら変わりありません。私が言う「投資」とは、もっと大局的でビジネスの本質に関わるものです。

【カリスマ投資家の教え】配当につられるあなたは「タコ」であるPhoto: Adobe Stock

配当受取りとは、右のポケットから左のポケットに税金を引かれて移す行為

 株式配当についてとにかく高いほうが良いと考える人も多いようですが、これは典型的な会計知識不足です。一部のタバコ株や銀行株のように今期の予想配当利回りが7%以上になるものも出てきて、「これはお得だ」と思う人も多いようです。もし、お得だと思っているタバコ会社がその配当を将来にわたって出し続けることができるなら、つまりその配当の原資になる利益を十分に出し続けることができるのなら、たしかにこの配当利回りは魅力的だし、とてもお得であることは完全に同意です。

 ただ、今期の配当であるとか、この数年の中短期的な配当維持見込みだけでお得だと思うのは早計です。なぜなら、配当とは単純な言い方で表現すると「タコが自分の足を食っている」状態だからです。これは丁寧に説明しなければならないでしょう。というのは、この議論はファイナンスに通じているはずの同僚や先輩と話をしていても混乱してしまうからです。

 株式配当と似た概念に債券のクーポンがありますが、債券の場合はクーポンと額面は切り離されており、償還時にその債券の発行体に何もなければ(倒産など)額面元本が戻ってきます。しかし株式には元本という考え方はなく、あるのは株価だけです。そして配当が支払われる度に確実に株価は下がります(これを配当落ちといいます)。つまり、配当前の株価=配当後の株価+配当なので、配当が高ければその分、配当落ち後の株価は下落し、株主にとっては完全に差し引きゼロなのです(正確には税金分だけマイナスです)。簡単に言うなら配当受取りとは、右のポケットから左のポケットに税金を引かれて移す行為なのです。