大トリになれるか? PayPay証券
アプリの中の「小宇宙」にご注意

 スマホを起点とする金融グループでいえば、忘れてはいけないのがPayPayだろう。こちらにも大きな動きがあった。かねてから予定されていた通り、10月1日にZホールディングス、LINE、ヤフー等がLINEヤフー株式会社に統合、新スタートを切った。

 LINEとYahoo! JAPANのアカウント連携も始まり、LINEユーザーがPayPayや、Yahoo! JAPANのアカウントに紐づく各種サービスを利用しやすくなる。LINEヤフーはその傘下に、決済のPayPayはじめ銀行・証券・カード・保険などの金融各社を抱える。LINEユーザーを、これらの自社グループに取り込む動きが加速するだろう。

 そもそもPayPayは、金融はじめあらゆる生活サービスの拠点となるスーパーアプリを目指している。力を入れてきているのが、もちろん新しいNISAだ。

 グループであるPayPay証券は、9月からPayPayアプリ内で「PayPay資産運用つみたて還元プログラム」をスタート。PayPay残高(PayPayマネーやPayPayポイント)で投資信託の積み立て購入を行った場合、残高利用額の0.5%分をポイント付与する(250ポイント/月の上限あり)。

 10月1日からはNISA口座の開設受付も開始した。実際に取引できるのは2024年1月の新NISAからだが、100円から投信を買い付けることができる。詳細はまだだが、PayPayポイントでも購入でき、先のつみたて還元プログラム同様にポイント還元も期待できるだろう。むろん、PayPayカードによるクレジットカード積立も始めると期待している。

 小宇宙のように、ありとあらゆるサービスと取引をアプリに詰め込んでしまえば、ユーザーはあえて外の世界に出ていく必要もない。

 24時間スマホを手放さないデジタルネイティブの若年層は、アプリ一つですべて済む気楽さやストレスのなさを愛するだろう。PayPayを使えば使うほど、その消費行動にあったクーポンが表示されるように、カスタム型の金融提案もしやすくなる。ユーザーは受け身でそれを受けるだけでいい。いわば「スマホ貴族型戦略」だ。

 ただし、囲い込まれてしまうと外の世界が見えにくくなる。時には自分の使っているサービスは本当に自分が選んだものなのか、それとも誰かに選ばされた結果ではないか、一呼吸おいて眺めることも必要だろう。